2010年7月14日水曜日

閑話 その五十一

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 随分前の本文で滅茶苦茶なNに、Kと一緒に初めての冬山に連れて行かれた話をした。Kが重いエアーマットを持って来て、しかも空気が漏れたと言う、丸で馬鹿じゃないかと言うあれで有る。
 其の時あたしは、ニッピンの化繊シェラフで有った。物持ちが良いですなあ、ニッピンの特価品を十年近く使って居たのだ。今改めて痛感する、余りにも常識に欠ける。
 ま、使えれば良いんだけど。
 勿論、使える事は使える。但し、3000m級冬山では、無闇と寒い。と言うより、冷たい。ブルブル震えて碌に眠れない。今なら、一睡も出来ないだろう。当時は三十歳だったので、耐えられたのだ。
 其れから三、四年は我慢して冬山へ行って居た。当時かじって居た中国語のクラスメートが、天山(ten・syan)を扱う会社に居て、一寸と難有りだけど、安くするから買わないかとオファーして来た。え、渡りに船じゃんかさ―。
 定価の半額以下で購入したが、別に問題も無いので、多分サンプルを横流ししたものと思われる。でも、あたしも彼も満足なので、何の問題も無い訳だ。
 あ、天山ったって分からないですよね。日本の傑作雷撃機じゃ無いのです。あ、益々分からなくしちまった。天山とは中国製のダウンのシェラフで、其れも二重になってるから、冬では最強なのです。
 其れからは楽になった。Sの言う通り、山は金(かね)だよ、全然違うからね、の世界だ。とは言っても、暖かく眠れる程冬山は甘く無いので、寒い冷たいは付きまとうが、レベルは違った。今迄の辛さは何だったんだろう、と思わされた。
 其れから三十年近く経過した。一昨年あたりから、寒くて冷たく感じる様になった。当然乍ら歳の所為も有るだろう。でも、マットは厚くなってるし、カバーも新品だ。其の癖春山でさえ、寒くて冷たいのだ。
 思い至った。三十年近く使えば、油や汗やら何やら、こびり付いて保温力も落ちるに決まって居る。メンテは干すだけで三十年近くなのだから。え、良くぞそんなまねが出来たなって?ふん、あたしゃあそう言う人間なの!
 で、クリーニングに出しました。安くは無かったけど、寒くて冷たいよりよっぽど増しだ。
 フカフカになって帰って来た。うーん、と言う事は、今まではぺチャンとして居た訳だ、気付かなかった……。
 今年の春山はシェラフに入ると、寒くも冷たくも無い。やったぜ、こうでなくっちゃさ!
 我乍ら驚く程の好い加減さだ。他に売りが無いので、仕方無い。こうなりゃあ自慢しちまおうっと、エッヘン!!
 此れで死ぬ迄、天山で行けるでしょう。目出度い限りで有ります。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

「山は金だよ、全然違うからね、、、、」立派な言葉です。まったく真実ですね!

kenzaburou さんのコメント...

仰る通り、残念乍ら真実なのです。

山は心意気だよ、と格好良く行きたい処なんですが、真実の前には唯の強がりになっちまうんです。