2009年5月10日日曜日

山の報告です その三

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 二の続きで、写真も無関係で失礼。
 ラッキーにも大岩に沿って雪が細々と残っており、其れをビクビクと踏みつつ大岩通過、少し行くと鞍部が見える、やったー!と雀躍りしたいが、バテて居て踊れない。「Y、見えるか、あそこが西沢ノ頭とジャンクションの間の鞍部だ、テントを張るぞ」。
 既に十五時半を回っていた。Yはよろめきつつ、気の毒にも、たまに腿迄雪に突っ込み乍ら鞍部へ向かう。
 腿迄雪に突っ込むと言うのは、雪の下には空洞が出来て居る事が有り、其処へ体重が掛かるとズボッと踏み抜き、動きが取れなくなる事だ。酷い時は、爪先が枝や笹の下に入り込み、ピッケルで掘り出すのも一苦労なのだ。楽しいので是非一度やって見ましょう。
 あたしはすっかり安心した。現在位置が明白になった以上は、喩え明日から視界を失っても、地図と磁石を頼りに苗場スキー場のピークの筍山には着けるし、後はスキー場を下れば良いのだから、無事に帰れるのは確実だ。
 翌四日も幸いにも視界は利いた。ジャンクションを越え燕山を目指すが半分近くは薮だ。
 あたしの靴はプラブーツなので雪には強いが薮には弱い。第一プラブーツは薮を突破する事を想定していない!従ってメーカーが悪いのでは無い。嫌なら地下足袋で登れば良いのだ、天候が悪化すれば足の指が落ちるけど。
 全く曲がらないのでスキー靴で山登りして居ると思えばほぼ正解。大変かって?当たり前だ!特に苦しむのが笹を登る時で、何故かと問われれば答えましょう。
 冬中雪に押しつぶされて居た笹は皆下向きに地べたを覆って居る。プラブーツはツルツル滑るだけなので、両手で掴んだ笹を頼りに歩を進める(腕を進めるかな?)。泣きたくなるが、意地でも泣かないもんね。
 燕山を越えて右が岩稜、足元は傾斜した笹床を通過した。「Y、右方注意」と言ったあたしが見事に滑った。畜生、プラブーツの馬鹿!
 フッフッフ、其処で滑落して葬式ってなヤワな親父じゃ無い。尤もそうだったら此の文は書いて無い訳か、威張るだけ野暮でした。
 確り両手は笹を掴んで居たので滑落は無し、(それは残念だって?誰だ!)丹沢の薮歩きは無駄では無かったのだ。唯立ち上がるのに偉く苦労をしちまった。足元はツルツル、頼るは掴んで居る笹のみで足掻くが駄目。Yが大丈夫?と聞いてくれるが、「助けて」と言ったらあたしの沽券に関わる。
 見栄?ピンポーン、見栄です!
 男は見栄と痩せ我慢、其れ捨てちまったら何が残るの?貴方がどんなに金持ちでも、OILが入って来なくなった瞬間お札は紙切れ。
 何言ってんだか分かんなくなったので話を戻すと、あたしゃあ何とか立って筍山に着き幕営出来て目出度い。
 翌日はスキー場を下ってバス停に向かうのだがYはやっと辿り着いた様で気の毒。良いのさ着けたんだから、他に何の望みが有りますか?
 越後湯沢で飲んだビールの美味さは分からない人には分からない!
 来年リベンジを誓います。

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