2009年5月9日土曜日

デートコースは雲の上 その三

FH000050

 

 いやー、皆さん動けず燕に停滞、或いは私の様にコースを変えてやって来るパーティで超満員、色取り取りの、見事な天幕村でした。私は、その如何にも落っこちそうな、雪の端で暮らしたのだ。あぶねえあぶねえ。
 天幕を張ったら、雪を取らなければ水が作れない。で、コッヘルの蓋で雪を取って、一寸っと置いたら、蓋が、すと動いた。え、と思う間もなく、雪を乗せた蓋が滑って行ってしまった。燕沢に、さーっと滑って見る見る消えて行った。新品だったあの蓋にはもう二度と会えないのだ……。
 それから二十数年、アルミ鍋の鍋蓋を、コッヘルの蓋にしている。全然不自由を感じた事は無いもんねー。私の装備は大体安物か、やけに年季の入ったものか、間に合わせ物だ。それでも立派に使いこなして冬山でも何とかやっている。(何威張ってんだか)
 Kは違う。安物以前で話にならない。たとえば、リュックは非常持ち出し袋。
私「何だ、それは」
K「おう、安かったんだ」
S「そんなの使えるのか」
K「充分だよ」
私・S「……」
 それで、案の定安物の持ち出し袋の負い紐が切れて大騒ぎする。何時でもそれだ。“安物買いの銭失い”、以前の事だ。“違う物買いの困り者”。大体持って来る物が間違っているのだ!
 滅茶苦茶なNに連れられて行った前述の冬山。Kの重いザックにはエアーマットが入っていた。え、海水浴か?その上、空気が漏れるのだ。間違えている奴はひどい。人に迷惑かけっぱなし。Kが、おう、大変だ、と叫ぶから(叫ばなくても、大変だと分かる)、ザックでも、予備セーターでも、スパッツでも、何でもかたっぱからKに敷かせて、事なきを得た。本当にKには……。
 S夫婦、Kと塔には寄らず、金冷やしから左に折れて鍋割へ向かった事が有った。大丸に取り付く迄思いの外下らされる。Kが文句を言う。
K「おう、大塚、何でこんなに下るんだよ」
 一瞬絶句し、何で下るかを考えてしまった愚かな私。
私「そうなってんだよ!」
 地図の話は、まあ、そんな奴の仲間なんだなと、思って納得して下さい。
 鍋割に次女を連れて行った。小学生の低学年だった。新緑が鮮やかな頃。馬鹿な父親は、後沢乗越への道を失って(え、どうすれば失えるの!!!)、強引にボサを分けて尾根路に出たのだ。原小屋の水場で迷った人を責められなくなっちまった……。

0 件のコメント: