2012年9月7日金曜日

表丹沢の名脇役 その二





 塔と鍋割りの間の樹相の美しさは、前述だと思う。特に新緑の柔らかさは堪らない。黄葉の頃も勿論素敵だ。ブナ林帯を楽しむ、絶好の場所で有る。アップダウンが割りと楽なのも良い。
 処でブナ林帯とは、ブナ、楢、クヌギで構成される疎林を言う。ブナの放つフィトンチッド(殺菌性の有る揮発物質でクレオソートの原料で有る。森林浴とは此の成分を浴びる行為を指す)は強力で、下草も生えない。従って、ブナ林帯はさっぱりして清々した感が有るのだ。
 おまけに、気が狂う程くどいんだけど、これらの樹木は土を確り保持し、水を貯え、沃土を再生産する、滅茶苦茶な優れものなのだ。おでえかん様、もう切らないでやって下せえ。
 其の樹林越しに、丹沢山、蛭、檜洞、石棚山への稜線が望める。勿論、檜岳(ひのきだっか)方面も見えるのだが、低い(ったって100m差なんだけどね)ので目に入らない。
 前述だろうけど、同高度の山は低く見え、自分より高い山は、一寸と高く見える。少しでも低い山は、不思議な事に目にも入らない。単なる低山なのだ。
 槍穂高のピークに立てば、常念や蝶を意識出来ない、と言えば理解可能だろうか?
 私は、人間とはそう言うもんだと思って居る。同じ水準に思えれば、其の人の方が上なのだ。え、人に上下が有るのかって?有るに決まってます(キッパリ)。
 SやDと尊仏山荘に泊まった時に、突然同期生の、MRともう一人が入って来てお互いに驚いた事が有った。高校生の頃だ。聞けば彼等は今夜は鍋割の小屋だと言う。止せば良いのにさあ、もう暗く成り掛けて居る上に、ガスっぽくなってんじゃんかさあ。今夜は此処に一緒に泊まって、明日明るくなってから、鍋割に行けば良いだろうが!
 と、皆で懸命に止めたが二人は聞かず、我々に出されたお茶をポリタンに入れて、出て行った。後日に学校で聞いたが、小屋が見つからず日も暮れて、ガスの中偉く苦労したそ
うだ。当然の報いだ、生きて居るだけ良かったと思え、ヘヘンだ!!
 (表丹沢の名脇役 その三へ続く)

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

本当に、ぶなの木々、貴重ですね。
自分が頂上に居る時、「同程度の山は低く見え、自分より高い山は一寸高く見える、少しでも低い山は目にも入らない、。」とは、名言ですね。まったく真実を突いています。槍ヶ岳の頂上にいると、自分が世界で一番高いところ、穂高より高いところにいるような気がして、まったく常念岳や蝶が岳は目に入りません。はい。

kenzaburou さんのコメント...

そうでしょうとも!
槍の穂先に立つと、世界で一番高いところにいるような気がする、全く同感です!
多分、あそこに立った事が有る人は、皆同意見だと思われます。