2012年7月21日土曜日

笹と唐松の不思議な関係 その四




 其の時の私はどうだって?常の如く地下足袋にコットンズボンなんで、いやはや何とも、営林作業員と選ぶ処無し。ふん、良いのさ、これでも積雪期には、ちゃんとニッカになるもんねー。
 Yは新品のニッカホース(長靴下)を履いて来た。其れも西ドイツ製の高い奴を。残念な事にYの脚は太い、立派に太い。依って上品(詰まり薄い)なニッカホースは押し広げられメッシュ状と化して居て、笹に擦られ続けて二時間、あっと言う間も無くボロボロになって仕舞ったのは、気の毒千万で有った。
 でも、唐松林が迎えてくれたから、良しとしよう。可愛い笹ともお別れ出来た事だし。
 翌日は丹沢山から三ツ峰の本間ノ頭、其処から、登山道で早戸川へ下った。其の本間ノ頭での出来事だ。
 休んで居るとブヨが唸りを立てて、大群で我々を囲んだ。ヤバい、血を吸いに来やがったな。露出部は手と顔、そして首筋、引っ切り無しに手を振り回し、ブヨを追い払って、合間に水を飲み、煙草に火をつけて咥える。何とも忙しい休憩で有る。
 急にYは「あーっ!」と叫んで転がった。
私「どうした!」
Y「あ、脚が!」
 Yは脚を狂った様に叩いて居る。
私「あ、そうか……」
 詰まり、ボロボロになったメッシュ状のニッカホースも、ブヨから見れば露出部だった訳で、Yが顔をガードして居るうちに。脚に群がったと言う訳だ。はっはっはっは、盲点でしたなあ。
 結果、数十箇所喰われたYの脚は無残にも腫れ上がり、一週間は腫れが引かなかったと言うお粗末でした。はっはっはっは、あ、失礼、人の不幸を笑うなんて……、ぷー!(吹き出した音)駄目だ、良い子ぶりっ子は無理だ、だって面白いんだもん、頭隠して尻隠さずの一種なんだから。
 (笹と唐松の不思議な関係 その五へ続く)
 

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

ツイード地のニッカはお洒落ですよね!!! 大好きです。 そうですか、積雪時しか着用しないのですか。ブヨに襲われたのでは 大変でしたね。刺されてアレルギーを起こして死ぬ人もいるのですから、怖いです。Yさんは、これから虫除けスプレー持参で登ってください。

kenzaburou さんのコメント...

ギョギョッ!!
ブヨで死ぬ人が居るんですか!

「いやあ、痒いけど死にゃあしないって」と何時も言ってましたが、間違いだったのですね。

Yは無闇と頑丈なので、大過無かった訳です訳なんだ。