2012年7月14日土曜日

休題 その九十二



 「グスコーブドリ」の伝記が映画になった。あたしの大好きな作品で有る。いそいそと観にいった。
 「銀鉄」のスタッフが横滑りなので、主人公のブドリは、例に依って青い猫だ。冒頭の自然描写は見事の一言で有る。水の描写も見逃さない様に。途中から描写のクオリティが落ちるのが一寸と残念だが、其れ程は気にはならない。
 「どんぐりと山猫」から山猫を引張って来て、絡ませる手法も、まあ成功して居る。冒頭近くで学校の先生が「雨にも負けず」を朗読するシーンは原作には無いが、効果は有りと此れを認む、だろう。
 唯一つ、致命的な間違いを犯した為に、原作の芳香を大部分失ってしまった。此れは、残念なぞでは片付かない。
 新聞の杉井監督インタビューを読んで居たので、悪い予感は有ったが、的中した。
 監督は言う。ブドリが何としてでも飢餓による悲劇を避けたい、何でもするという思い、結果として自己犠牲に表現するしか仕方がないけれど、別に主軸ではない。でも、描かずに観客を納得させるのは難しい。そこが一番じたばたしたかな。と。
 明らかに、作品把握を間違えて居る。杉井監督だけでなく、スタッフ一同そうなのだろう。確かに、自己犠牲が此の作品の主軸では無いが、主題だ。此の作品が書かれた意義だ。それを否定すれば、当然じたばたする。
 原作を知らない人も観に行くだろう。ラストが分かりにくく首を捻る人が多いだろう。主題と向き合わず、逃げを打って、何となくムードで収めて有るのだから。
 宮沢賢治への侮辱と言っても良い制作態度だ。少なくとも、原作の背骨は抜きました、位のテロップを流したら如何だろう。
 此のチームは此の作品を取り上げるべきでは無かった。外にも宮沢賢治には名作が多いのだから、手に負えるものを選べば良かったのだ。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

宮沢賢治の作品は 読む人の解釈がそれぞれ分かれるので、映画化やアニメ化は難しいですね。自分のイメージが壊れるのがいやで、「銀河鉄道の夜」も、観ませんでしたし、芝居も観ないできました。彼の作品はやっぱり、一人で誰にも邪魔されないところで、ひっそりと読むのが良いような気がします。それと、この青い猫の顔、好きになれません。

kenzaburou さんのコメント...

どうやら其れが一番の様です。
イライラしないで済みますよね。

あたしはそうしなかった為、怒り狂って帰って来ました、アホです。