ふざけるな、冗談を言ってる余裕は無いのだ!手足の指が二十本全てつったのだ。私は、声を殺し、ただ悶えていた。声を、何故殺したのだろう?馬鹿ですなあ。どったんばったん苦しんで(実際はどったんばったんなんてしていない、呻くだけ)、やがて、動けるようになって、必死に表に這い出たのです。多分げっそりとやつれていただろう。水のほとりで、同志落伍者がしょんぼりと炊事をしていた。
同志落伍者「どうしました」
私「そこらじゅうつって、痛くて、どうしようもなかったんです」
同志落伍者「はあ」
私「体中つったんです」
同志落伍者「……はあ」
経験の無い彼には、多分分かって居ない。
私「こんどつったら、助けて下さい、叫びますから」
同志落伍者「良いですよ」
どう助けるか、分かってなかったと思う。この夜も何度もつったが、初っ端(しょっぱな)のような大発作が無かったのは、幸いでした。二度も有ったら生き地獄だ。
一晩寝ても、相変わらずの、ばてばておじさんです。そう、この山行から、若者ではなくなって中年おじさんになったのだ、えっへん、……(涙)。
中ノ岳には、本当にやっとの思いで着いたのです。同志落伍者は遥かに元気で、とっとと登って行ったのだ、此の裏切り者……。丹後山へ行く予定(だったのだ)なんざ豚に食われちまえ!真直ぐ下ろう、こうなりゃ最短距離で十字峡へ下ろう。
下りで、つりまくったのは、初めての経験でした。普通下りではつらない、膝は笑うけど。下ってはつり、休んで下り始めてはつり、野中へは、ふらふらになって辿り着きました。
……えーん、情無い。それからは今日に至る迄、山に登ると何らかの意味でひどい目大会を開催しています。
ま、歳だから、そんなもんだと思わなくっちゃね。
(体中がつった! その七へ続く)
2012年4月18日水曜日
体中がつった! その六
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2 件のコメント:
危なかったですね。無事に帰られて、良かったです。急激に脱水して、ナトリウムを失ったので全身の筋肉が反応したのですね。小動物を安楽死させるときに、ナトリウムと拮抗して働くカリウム(ポタシウム)の注射をして死なせますが、それと同じ反応が出たわけです。よく生きて帰られました。さすが!!!
う、う、そんなにヤバかったんですか。
安楽死のそばでつって居たんですね。
帰れて良かったです。
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