祓川(なめりかわ、水場が有る)に辿り着いた時は、両脚がつり、殆ど歩行不能状態だった。いやーあそこ迄バテた思いは、今迄何回有ったのだろう?トップクラスである事は間違い無い。
祓川から中ノ岳迄は、僅か一時間だが、もう歩けない。本当に歩けない。殺すぞ、と言われれば、分からない。多分死ぬ覚悟で歩くだろう。でも幸いな事に、殺しに来る人間がいなかった。……良かった、とても良かった。
祓川の水は冷たいと案内書には書いてあったが、生ぬるかった。そう感じた。でも、がぶがぶ飲んだ。ちっとも美味しくない。当然だ、塩分とミネラルを失っているのだから。だから、つりまくったのだと、今では分かるのだが、其の時は分かっていなかったのだ。
中年の単独行者が、同じく呆然と休んでいた。彼も行動不能になったのだ。この夜の祓川の天幕は二つだけだった。
強いなあ、他の方々は皆中ノ岳に進んで行ったのだ。我々落伍者二人は、ボソボソと言葉を交わし、それぞれ天幕に戻った。私にとっては、其れからが本番だとは、神ならぬ身の知るよしも無く、とはこの事ですなあ。
天幕に入って、座ったとたんに、つった。何処が?何処もかしこもだ!
あれは、長いんだか短いんだか、良くは分からない人生の中で、たった一回の経験でした。経験してない人には、是非してもらいたいと思います。
脚がつる、両方とも。あ、と脚に手を伸ばすと腕がつる、それも、何故だか両方。あー、と痛がっていると、背中がつる。苦しんで体をよじると、横っ腹がつる、肩がつる、尻がつる。うー!足の裏がつった!脛がつった!あ、手の平が!わー、指迄つったー!く、首を吊ったー!
(体中がつった! その六へ続く)
2012年4月13日金曜日
体中がつった! その五
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2 件のコメント:
すごい経験をされましたね。でも、へたれた姿のイラストが、とても素敵です。まったくもって、もう動けません、という様子がイラストから よくよく伝わってきました。アルミの皿や石の様子、山をよく知った方の描いたものだということがわかります。
でも、そんなに筋肉が痙攣したのに、頭の方は明晰で思考能力が失われたり、混乱しなかったのは、良いことでしたね。また人によっては 筋肉よりも心臓の筋肉にきていたら、脈が速くなって、そのまま心筋梗塞を起こしていました。頭も心臓も、人より強い、と言うことが、証明できましたね。ともかく、無事で良かったです。
粗末なイラストをお褒め頂き有り難う御座います。妻が描いたのですが、妻も喜んでおりました。
そうですか、脳や心臓に来る事もあるんですね。無理は禁物ですなあ。
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