2011年8月6日土曜日

下りは辛いよ その二


 だって、槍を越えて遥々と燕に着いて、そっから一気に下るんだから、楽な筈は無い。特に中高年にとっては、だ。最早昔では無いのだから、私も立派に苦しんで膝も笑うに決まって居る、エッヘン。
 ん、S夫婦みたいな化け物(失礼)は、一
昨年に合戦尾根を一気に登って、常念小屋迄行っちまったそうだから、中高年だからと一括りにゃあ出来ない。強い中高年は強い、弱い中高年は弱い、と言うだけなんだよね。
 しかし物には程度ってもんが有る。S夫婦
よ、君達は明らかにやり過ぎだ。そんな事してたら、比喩では無く、本当の化け物になっちまうからね。もっと中高年らしく登りましょうよ。とてもじゃ無いが、話を聞いただけでもついて行けないんだもん(涙)。
 今迄で一番辛かった下りは、やがてアップ
するけど、八海山(お酒じゃ無いですよ)の後に下った中ノ岳で、少し下れば脚がつり、休んで直ったと思って下れば又脚がつり、一体何時になったら降りれんだろう、トホホホの世界になったが、あれだ。乞うご期待(え、嫌?)。
 下りで苦しむのはKだ。何たって山から落
ちて死に掛けて障害者となって、しかも健常者より達者に山に登るんだから、障害者って何なんだよ!と思うのだが、それでも下りは辛いと言って居た。
 足首を折ると、登りは良いけど下りは駄目
だそうで、特に還暦を過ぎてからは、登りも下りも思うに任さなくなって、山には中々登れなくなって仕舞ったそうなんで、無理からぬ事だとは思うのだが、此れは本人が一番残念だろう。
 仕方が無い、Kよ。あの遭難の時に死んで
居たかも知れないのだから、思うように山登りが出来なくなった位は、あきらめよう。せめて、温泉にでも行こうじゃないかい。露天風呂から新緑を眺めて、湯から出たら、一杯やろうよ!
 冬の赤岩尾根を登る時が有った。大昔だ。
あ、赤岩尾根とは鹿島槍への最短尾根だ。え、知ってるよって?はい、我慢して下さい、知らない人も居るかも知れないので。
 擦れ違った十数人のパーティが有った。一
目で分かる大学のパーティだ。勿論全員でかいキスリング(当時なんで)、先頭はサブリーダーとは、今に至る迄の決まりで、ラストがリーダーなのだ。
 其のリーダーが大きいキスリングを背に、
雪を蹴立て乍ら腕組みして降りて来る。頼もしい。山は経験だ、と無言で示して居た。う―ん、絵になる姿だ。
 薬師岳のパーティにも、経験者が居たらな
と思って仕舞うのは無理からぬ事だ。でも、居なかった。仕方無いのだ。
 あ、突然出てきた薬師岳とは、前にも触れ
た愛知大の冬季十三人全滅の惨事を指す。全員が一年生と二年生だったので、同日、アタックに成功して無事帰還したパーティとの違いは、経験と言う事だったのだ。
 (下りは辛いよ その三へ続く)

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