2009年11月26日木曜日

迷ったなんて認めたくない その五

FH000031

 

 中央アルプスの話が出たので、ついでにもう一つ。中ア南部は厄介だとは聞いてはいた。行ったら本当に厄介だった。これも二昔前の事だから、今は違うかも知れない。違っていたら、御免なさい。
 Zと奥念丈を目指した。上片桐の無人駅で寝て、鳩打峠へは前夜頼んで置いたタクシーで入り、烏帽子へ向かった。烏帽子迄は立派な道だった。その後がいけない。地図には破線が有る。行けば何も無い。たまに樹に赤テープが有るだけ!
 タイミングが悪かったのだろうか。普通何となく、踏み跡とは言わないけれども、何かが通った痕跡は有るのだ、少なくとも破線が記載されている以上はだ。処が全く痕跡が見事な程に無い。古びたマーク(たまに有る)が有るだけで、あとは笹薮。
 それも何時までも何処までも笹薮。其処をキスリングでこいで行くのは、難行苦行、七難八苦、……でもないか。念丈岳へのピストンでは、方向を失いうろついたが、それでもZの冷静な判断に助けられ(リーダーは誰?はい私です、あの時は一寸とパニくって、はい……。前に書いた、迷った時にはパニクるとは此れです)何とか与田切乗越には着いた。
 一面の笹原である。看板が立っている訳も無く、地形でそれと判断するのだ。幕営した痕跡すら無い。熊笹を踏み、天幕を張る。大自然そのものだ。この日は良い天気で笹に蒸されたが、翌朝は、雨だった。この日に森林限界を越えるというのに。私には良く有るパターンで、とても嬉しい。
 雨に打たれながら笹を登る。石楠花と這松の稜線に出て、やっと藪からは開放された。ヤッホー!処が今度は、よろけるような強風と、叩きつけて来る雨がお迎えしてくれた。ヤッホー、トホホ……。
 空木岳への縦走予定だったが、とてもじゃないがその気になれない。越百から中小川道を下ろうと決めたのだが、それが偉い判断ミスであるとは、すぐに思い知らされる事になる。このルートをご存知の方は分かるだろうけど、鎖、梯子が無闇と有る急な路なのだ。
 濡れた鎖に縋り、梯子に滑り、やっとの思いで下降して行く。Zは頑強な男だが、下りに弱い(膝に故障が有ると、後に分かった)、さぞや辛い下りだっただろう。
 相生ノ滝の落口近くへ降り立った。此処迄来ればこっちのもんだ、あと一時間半で避難小屋が有る。ヤッホー、屋根の下で眠れるぞ。
 此処で渡渉が有る。案内書には、増水時注意と記されている。幸いな事に、モロ増水時だったのだ、やったぜ!
 5m近い幅で濁流が渦巻いている。とてもじゃないが荷物を背負って(空身でも)跳べるとは思えない。すぐ下は相生ノ滝だ。下手をすれば落差30mのジャンプを楽しめる、それも待ち時間無し、無料ご招待で!
 (迷ったなんて認めたくない その六へ続く)

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

笹藪のうえのテント、、、すごいですね。お茶を沸かせたり ラーメン作ったりできるのでしょうか。藪こぎが笹の葉では、傷だらけでしょう。 よく生還されました。

kenzaburou さんのコメント...

それがですよ、一寸と動いても床(?)がユサユサ揺れますので、コンロは手で抑えっぱなしです。食器を下手に置くとひっくり返りますので、持つしかなく、手が何本も欲しい状態です。
笹お陰で傷だらけ、男っぷりが上がりました。はははは……。