2009年11月12日木曜日

迷ったなんて認めたくない その二

FH000096

 

 で、上越の斜面の夜は、思えば単独ゆえの不安であったのだ。ろくに眠れず、まどろむ程度で朝を迎えた。それでも一晩で気力体力を回復していた。若いって素晴らしい♪登り返しは、さほどの苦労も無く、ピークに戻れた。昨夜の苦労と不安は何だったんだ?そんなもんだ、本人だけが勝手に苦しんでいて、人が傍から見れば、馬鹿じゃないの、の世界で有る。
 幸いにもガスは薄く、稜線をかろうじて見渡せる。何だ、こっちだったんだ、磁石で確認をしたのに飛んでもない方向に降りちまったんだ。迷う時は迷うもんなんだなあ。
 そして何とか清水の部落に到着した。最終バスを待ちながら民宿で食べた山菜蕎麦の味は、未だに心に残っている。民宿のおばさんは「慌てなくて良いよ、バスは止めておくから」と道に立っていてくれた。それも蕎麦の味に入っているのだろう。
 この民宿(済みません、名前は不明です)で、数年たってタクシーを呼ぶ為に電話を借りた。何、バスを三時間待たなければならなかったので、仕方なくタクシーである。
 処がおばさん(勿論、私の事は覚えている筈も無い)は、「此処でお待ちなさい」と言って、お茶と漬物を置いてくれた。こっちは電話を借りただけだ。これで感動しなけりゃ人間とは言えないでしょう。本当に清水の人は暖かいのです。
 話を、迷う話に戻しましょう。
 磁石だが、困った事に良く狂う。体から離して見るのだが、金属の影響を受けるのだろう。安物だからかな?Yと一緒の時は、Yが磁石係りである。私が地図を広げながら、
私「方向!」
Y「はい!」
 Yよ、そういう時の返事は中々良いぞ。そういう時は藪の中か、沢の中か、どっちにしろ間違える訳にはいかない状況なので、打てば響くやり取りになるのは、当然だ。間違えれば、ひどい目に会うだけなのだから。
 Yは極力体から磁石を離し北を指す。私が地図を其の方向へ向ける。
私「こんなとこか?」
Y「OK!」
 と何とか行く方向を定めるのだ。大体は当たりである。偶(たま)に外すのは私の所為である。
 人の迷った(迷いかけた)話をしよう。自分のネタが殆ど無いので、済みません……。 (此の記述は平成十八年の時点なので、平成二十一年現在は、しょっちゅう迷う様になってしまい、俺も衰えたもんだなあと、実感してるのです)
 三ノ塔の下り(三ノ塔尾根)は、ダラダラ長くて好きでは無いが、大倉に出る為止むを得ずに歩く機会の多い尾根だ。本来は烏尾尾根の様に一気に下って勝負(何の?)の早い尾根が好みなのだ。
 (迷ったなんて認めたくない その三へ続く)

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

そうですか。磁石は体にくっついて見ると 正確ではないのですか。また どっかに金属があると、変わってしまうのですね。どうやって見ても ちゃんと北を指すのかと思っていました。
蕎麦やのおばちゃん、いい人ですね。こういう 名もなく業績もなく清く正しく人に情をそそぐ人が 本当に立派な人なんですね。写真は唐松岳ですか。

kenzaburou さんのコメント...

本当に良い人です、立派です。
あたしもそうなりたい、と思って居ます。
写真は、尾根の長い三ノ塔です。