2009年11月22日日曜日

迷ったなんて認めたくない その四

 

 

FH000028

 

 私と妻はカールを横断して、浄土乗越へ登り始めた。突然、あの晴天が掻き消えガスと風になった。毎度お馴染みの天候急変である。秋の天気は、女心?男心?さてどっち?私なりの回答です。どっちもだ!
 稜線に上がった時は、雨さえ加わった強風となっていた。さっきの、おー!は、本当にラッキーな人達だけが発したのだ。此処迄来れば、今宵の宿の宝剣山荘はもう着いたも同然だ。関西弁の中年女性が二人、強風の中に立っていた。
その人「あのー、小屋は何処でしょう」
私「え、小屋って、目の前ですよ」
 ガスで見えない。と、一瞬小屋が見えた。本当に目の前だった。
その人「ほんまや!おおきに」
 私の谷川岳と同じだって?全く違う!此処は道の上、しかも一級国道なのだ。地図を見れば(或いは見なくても)、手探りでも小屋にぶち当たる。大丈夫なんだろうか?もし、私に会わなければどうなっていただろう。(余計なこった、一寸と進んで小屋にぶつかるって)
 翌朝は、お蔭様で雨だった。やったね。(反語ですよ。え、分かってるって?失礼)妻が嬉しそうに言う。
妻「ね、あの人達(関西のおばさん)夜中に懐中電灯で茹で卵を食べていたわよ」
私「はっはっはっはっは」
 夜中にトイレに行く時見かけたそうだ。妻よ、そんな事を何故喜ぶ。ひょっとして、似た者夫婦なのだろうか。でも面白いでしょう、夜中に懐中電灯の明かりで茹で卵を食べている人達って。はっはっはっはっは……。
 雨の中、何も見えないのに、ご苦労にも木曾駒へ向かった。ラフに歩いて登山道を外した。でもどうって事は無い、尾根筋なんだから。構わず進んだら、三人の女性パーティが佇んでいた。
そのリーダー「あのー、道を間違えたみたいなんですけど」
私「ついて来て下さい」
 当然ながら、登山道には直ぐ出られる。だって、一直線の稜線なんだから。
そのリーダー「有難う御座います」
大丈夫なのだろうか?簡単に立てるが三千米級の山は、矢張り三千米級の山なのだ。山はお天気商売、晴れていれば何でも無いが、崩れたら手に負えない。超一流の登山家だって悪天候には勝てず、命を落としているのだ。日本人で世界に名を知られた登山家(冒険家)で存命なのは、スキーの三浦氏ぐらいなのでは?
 文太郎、長谷川、加藤、植村の各氏も皆山で逝ってしまった。超人達でも自然には勝てません。
 今年(平成十八年十月)は早くも四人の遭難者を出した。白馬で三人、奥穂で一人だ。天気に恵まれれば何でも無く、元気に下山していただろう。十月であっても、天気が臍を曲げれば、即冬山遭難である。須らく便利になっても、大自然は変わらない。山に行く方よ、少なくとも地図は読めなくてはいけない、と愚考します。
 (迷ったなんて認めたくない その五へ続く)

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

KENZABUROUさんは、山に入るごとに 人に道を聞かれて「あの人、大丈夫なんだろうか、、、」と、心配させられるのですね。行く道がわかっていても、霧に囲まれたら 人に こっちでいいかどうか 聞かずにいられない 女心 わかってくれないみたいですねー。
そんなに豪快に笑われるのならば、、、懐中電灯でゆで卵は食べないように 今後気をつけたい、と思います。(きっぱり)
本当に、素晴らしい人みんな 死んでしまったんですね。長谷川さんが亡くなったとき、本当に泣きました。植村さんも、永遠に私の英雄です。

kenzaburou さんのコメント...

わー、済みません、女心は本当に分かん
ないんで(本人は分かってるつもりなのが笑えます)、妻にも時々指摘されます、トホホ……。

どうぞ、そう仰らず、懐中電灯でゆで卵をお食べ下さい。決して悪い事では無いし、第一面白いし、はっはっはっは。