2009年11月5日木曜日

閑話 その三十五

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 二年前(平成十九年)の夏、長男が山に行きたいがどのルートが良い?と聞いて来た。お、何だどうした、悪い物でも喰ったか。二泊位の予定だと言う。そう来りゃあ任せて置け、すっごーく良いルートを考えるぜ。
 長男は決して悪い奴では無いのだが、物事を舐めて掛かり、直ぐ図に乗ると言う欠点を持つ。え、思えば全くあたしと同じだ、悪い血を引いちまったもんだなあ(少し哀れ)。
 提案は、蛭の小屋に泊まり、翌日は犬越路か加入道の避難小屋泊、畦ヶ丸迄縦走し下山。どうです、良いルートでしょう?水は初日は棚沢の頭の水場で、二日目は犬越路から一寸と下って補給する。克明に説明した。
 長男は出掛けた。暑い日だった。どうだとメールをしたら、やっと辿り着いた、酷い苦労だった、と返事が来た。はっはっは、そうだろうとも、真夏の蛭にそう簡単に着かれちゃあ困る。
 長男は翌日帰って来た。何だどうした。長男「蛭から檜洞丸がきつくて、大室山へ進む自信が無いのでつつじ新道を下ったんだ」
 何たるちあ(親父ギャグ失礼)!仕方無い、無理をしなかっただけ良しとしよう。
 十一月になって長男に言った。
私「中途で終った縦走を仕上げたらどうだ」
長男「そうだね」
私「檜洞丸から入って、大室山でツェルトを張って、翌日畦ヶ丸だ」
長男「良いね。もう暑くないし」
 ふっふっふ、こっちには深慮遠謀が有るのだ。山を決して舐めない様にさせる絶好の機会だ。大体ツェルトを持たせるのが其の始まり。しかもシェラフは夏用を持たせる。レクチャーは勿論した。
私「良いか、冷えるから寝る時は着れる物は全部着込んで、場合に依っては体に新聞紙を巻くんだ。足はリュックに突っ込め」
 そんなのレクチャーじゃ無いって?確かにそう、サバイバル……。でもあたしゃあ確信犯で、死にっこ無いって、悔しければ死んで見ろ!(こうなりゃ滅茶苦茶)
 で、色々エピソードは有ったものの(長くなるので割愛)、長男は首尾良く大室山頂にツェルトを張りました、目出度い。
 処が奴は人の話を聞いて居ない。全てを着込まずに夏用シェラフに入った。極め付きの馬鹿だ。長男は朝の冷え込みに耐えられず起きた時に、顔にバラバラと氷が降り掛かり辛かったそうだが、当然十一月の山はそうなの。
 ロウソクを点けて朝飯の支度をしたらしい。
長男「ツェルトでローソクを点けただけで、暖かいんだね」
 倅よ、其の一言を聞きたかったんだ!!!
 ひどい目に会って初めて分かるのが真実なので、形而上の問題では無いとはあたしの持論で、これもひどい目に会い続けてやっと分かったのだから、お勧めするには気が引ける。
 結局長男は、靴も破れたので凍った銃走路を諦めて、犬越路から下って来たのでした。(思えば酷い親ですなあ)

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

KENZABUROUさん=大松監督=巨人の星の一徹親爺=片目のおっちゃん=ヨットスクール=鬼=山屋

息子さん=星飛雄馬=明日のジョー=ろうそくの暖かさで凍えた指を暖めたマッチ売りの少女=フランダースでパトラッシュを抱いて凍え死んだ少年

というイメージで理解しても良いでしょうか。ぜんぜんいじけない息子さん 偉い! 

kenzaburou さんのコメント...

イメージに誤り有りと認めます。

KENZABUROU=考え深い親父

倅=親に似ない不肖な息子

と思ってんですが……。