2009年8月8日土曜日

閑話 その二十七

店 037  閑話その二十八で高山裏の小屋の話をしたが、翌日は三伏峠泊まりと思って居たのだが、足の向く侭塩川小屋迄下って仕舞い、其処で泊まった。入山四泊目の宿で有った。三年前の話。
 三十代半ばの正月、塩見岳をやった時に三伏峠を登降したが、こんなに急な路だったとの印象は全く無く、改めて歳月と己の衰えを思い知る下りで有ったので、膝が笑っちまって、あたしも笑っちまったぜ。
 風呂に入れるのは川沿いの小屋なればの贅沢で、山の疲れが抜けると言おうか、どっと出ると言おうか、いずれにせよ、適切な表現不能なので簡単に言えば、最高!!
 其の間に高山裏で同宿だった男性(四十代、以下男と呼ぶ)が降りて来、青年(学生だった)が一人バスで上がって来た。泊り客は三人かと思って居ると車が来て、一人の男性(三十代後半)を下ろして去って行く。あたしは小屋の横でアブを払い退け乍らビールを飲んで居た。
 車の男性は英語で何か聞いて来た。何だ?自慢じゃ無いがいんぐりっしゅはからきし駄目、慌てて男と青年に助けを求めるが、二人共あいきゃんのっと状態で、何と情無い奴等だ!言う資格無し?全くです。
 でも、あたしと男は青年を責めた。
私「現役だろう、何とかしてよ」
青年「本当に、英語苦手なんですよ」
男「仕様が無いなあ、若いくせに」
 ま、勝手なもんです。小屋の親父は信州弁だけ、当然英語なんざ、英語を聞いてる様でさっぱり分からん(?)。
 結局彼は従台湾来的男人で、身振り手振りで分かったのはガスを売ってないか?との問いなのだが、小屋には無い。偶々(たまたま)男のガスが同じ物だったので、男は彼に贈呈した。彼は恐縮する。
男「もう帰るだけだからどうぞ」
私「別客気、別客気」
 と、片言の中国語で通訳。じゃあ中国語で話せば良いと思うでしょうが、相手の言ってる事が聞き取れないので会話は不成立なのだ。
 今度は彼はコピーのラフな地図を出して、此のルートを行くが、此の小屋迄一日で行けるか?と聞いて居るらしい。
私「不能、要両ヶ日子」
男「こんな地図じゃ破れるな」
 今度はあたしが地図を進呈、一寸とした日台友好で有る。しかし、どの小屋も英語が通じるとは思えないが、泊り客が何とかしてくれるだろう。
 現に、彼は男と青年と一緒に小屋の食事を食べて居た。あたしゃ自炊なのでとっとと寝て仕舞ったが、何とかなるものです。
 翌朝、「わざわざ歩くなんて、気が知れない」と言う男の声を後に、バスを待たずに鹿塩へ歩き出したが、少しでも早く帰りたかっただけで、遠い鹿塩のバス停へ向かい、どんどん歩いて行ったのでした。

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