2009年8月2日日曜日

カモシカに会いましょう その四

FH000054

 

 仕方なく尾根を登り始めたが、適当な幕営地が無い。もう登るのは体力的にも時間的にも限界なので、こうなれば何とか交渉して、カモシカ様に場所を譲ってもらうしかない、と意を決して引き返したら、彼はもういなくて、ほっとしたのです。情無い話だが、カモシカは目の当たりにすると本当に立派なのだ。
 話を札掛に戻そう。脱線せるのが売りなんで、こらえてつかあせい。
 札掛から塔ノ嶽へは、長尾尾根で登れる。昭和三十八年の案内書には「静寂な原生林で、思索瞑想にふけるのによく、行きかう人とて少ない」とある。今は植林が増え原生林は減ったが、行きかう人とて少ない、は未だに立派に生きている。ただ私は、山を登りながら思索瞑想にふけった覚えはない(有る人いますか?)。断片的な考えが浮かんでは消えるだけである。ひょっとすると、頭の造りが雑なのだろうか。
 特に最近は「あー辛いなー」とか、「あのコブでやすむぞ」とか、「あとどれだけ歩かなきゃならないんだ」とか、飛んでもなく情無い思いしか浮かばない。廃人寸前である。最早廃人だって?言い過ぎだ!もう一寸とは保つのでは、と希望的に思ったりして……。
 長尾尾根も何度も登降したが、雨だったのは一度だけだ。そのコースは札掛を通ったのに決まっているのだが、へー、降られない時も結構有ったんだ。印象では札掛イコール雨なのだが。
 と、此処迄書いて気が付いた。思い出せば一人の時は全く降られていない。パーティだったり、友人達を連れて行ったりすると、殆どが雨か雪に降られ、前述のBと一緒の時は珍しくも例外だったのだ。私とB以外は皆雨男、雨女なんだ。ふ~ん、そうかあ、謎が解けたぜ。(本当かなあ?)
 長尾尾根を登り切ると新大日の小屋の前に着く。此処から塔迄は一息で登れる。新大日は不思議と寒いという印象がある。理由は、不明だ。夏だって通っているだろうに。確かに風通しが良い場所では有る。ま、たまたま休んだ時は寒い日だったと言う事でしょう。私の印象なんざ、所詮そんなとこです。
 札掛から登れる山は、その長尾尾根と、大山北尾根と、物見峠コース位なものだ。従って極くマイナーな扱いを受けている。宮ヶ瀬へも、ヤビツ峠へも林道歩きだ。宮ヶ瀬への林道も歩いて見たたが、お薦めする程のものではない。どうしても歩きたいと言う人がいれば、やるべきです。
 札掛は登山基地ではない。札掛なのだ。最近はハイキングコースもたっぷり作られている(登山じゃないですよ)。札掛の原生林を楽しむのが、本来なのだ。できたら車でなく、歩いて訪ねて欲しい。鷹もムササビもモモンガーも蛙も飛ぶ。狸も兎も狐もミミズも走る。運が良ければカモシカも見る事ができるだろう。(保障はしません)
 雨の日が、特にお薦めです。

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