2014年8月3日日曜日

死ぬほど旨かった桃の缶詰 その五



 で、急遽予定変更、塔迄走って(これも表現であって、走らない、念の為)塔の水場経由でユーシンに戻る事にした。うん、良い計画だ。それ程の好天だったのだ。
 善は急げ、取り合えず蛭には、半分走るようにして登り着いた。うーん、若かったんだなあ。青空の下、桧洞丸が秋の陽に照らされている。此処迄は先ず先ず上出来である。
 ルート変更に、一つ手落ちが有った。手持ちの食料がジャムパン一つと、チョコ一枚だけだったのだ。あ、怒らないで下さい、ピストンの積もりだったもので、はい。怒る貴方(若し居れば)もピストンなら、同様でしょうが。(え、違う?失礼しました)
 ジャムパンは桧洞丸で食べてしまって、もう無い。蛭ではチョコを食べようと、取り出したら、鹿が寄って来て、くれと言う。で、半分あげてしまったのだ。後ろの章に登場する鹿とは全く違って、フレンドリィな奴だったので、つい……。
 どうすんだよ!食べ物が無ければ、ひどい目に合うだけだろうが!はい正解です、ちゃんとひどい目に合いました。
 蛭から丹沢山は、あんなに遠かったんだ、と思ったのは初めての事だった。それ迄は走るように歩いていたのに、ガクっと力が抜けて、足が進まない。完全にエネルギー切れ状態だ。外の登山者はアノラックを着込む涼しさ(寒さかな)なのに、汗ばかり流れる。詰まり、冷や汗ですな。
 つるべ落としの登りにかかってからが、ひどかった。一寸と登っては座り込む。そして、す、と寝る。すぐ目覚め、立ち上がる。五度は寝た。寒い位の中でだ。結構ヤバイのだ。半袖半ズボンの姿で、おまけに冷や汗でビショビショなのだ。
 どう見ても遭難寸前の奴である。寝てしまうってえのは、話に聞いた事はあったが、うーん、本当なんだ。何でも経験ですなあ。でも凄くヤバイ事なんです。
 (死ぬほど旨かった桃の缶詰 その六へ続く)

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

低血糖で昏睡の一歩直前の状態ですね。脳に十分のエネルギーが回っていかない状態です。冷や汗が出るのは血液の中の糖分:エネルギー源が足りないのに心臓を動かさなければならないので、余分な水分を出しているから。本当に危ないですよ。もう少しで、昏睡でばったり倒れるところです。そのまま脳死、、、。誰かが見つけて糖濃度の糖分を注射してくれないと意識が戻りません。教訓:チョコレートはどんなに可愛くても鹿にあげない!ご自身をお大切にしてください。

kenzaburou さんのコメント...

そうだったんですか!!
寒いのに、何であんなに冷や汗が出たのか不思議でした。
す、と眠りに入るのも初めての経験でした。
やばいなあ、とは感じて居たけど、本当にやばかったんですねえ。

教訓は、身に染みて守ります!!