2014年8月11日月曜日

閑話 その百三十四




 下り始めは良かった。Yも下りになったら快調だし、Toも快調だった。あたしもアルコールがほぼ抜けた様だ。
 突然(ま、何時でもアクシデントは突然なんだけどね)Toの動きが止まった。
To「あ、つった」
Y「何処」
To「脹脛の横なんだ」
Y「ああ、此処ね」
 Yはつって苦しんだ経験が豊富だ。あたしもだけど、Yは本当に優しい男だ。
Y「マッサージしよう。ああ、つってるよ、ほら」
 あたしは見て居るだけ。冷たい奴ですなあ。チッチッチ、其れが違うんだよねえ。あたしの仕事は事故を起こさず、皆を無事に帰す事。各自の状況は確実に(多分)把握して居る。此れなら行けるなとの判断はして居るのさ。
 つった、つった、を繰り返し、Yがマッサージを繰り返し、何とか傾斜が緩んだら、Toはちゃんと歩ける。そうなると、Yが遅れる様になる。其れは、あたしには読めて居る。
 目出度く大倉に着いた。勿論O屋で一杯やる。処がToが飲まない。ビール一缶だけだ。高取山の時は日本酒に迄行ったのにさ。
私「Toよ、飲まないの?」
To「……飲めと言えば飲むけど」
 飲めとは言わない。矢張り多少はこたえて居るのだろう。初めて1200mの標高差を往復したのだから。
 大倉尾根は歩き易い。道は整備されて居るし、傾斜もそこそこだ。同じ標高差でも、急斜面だけだったら、難行苦行となる。南北中央アルプスの尾根も1200m位が多い。傾斜が違うので、苦労させられる。
 ブナ立て尾根を下る時は、一歩一歩が飛び降りる思いで、下って居てうんざりした。登ればもっとうんざりした事だろう。
 でも1200m、Toは初心者乍ら良く歩いた。多分彼は、今後山好きの男になって行くのだろう。
 元々バスケをやって居て、家業と同じくバネの効いた奴だ。次は沢かな、と言ったらYが「其れは駄目!」と叫んで居た。
 仰る通り、無理無く行きましょう。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

ワー!沢登りを教えてくれる先生がいるなんて!!!ラッキーな人ですよー。一度教わってみたいとずっと思っていました。山岳部出身で経験の豊かな人に連れて行ってもらえる人達は、本当にラッキー、、、うらやましいです。

kenzaburou さんのコメント...

Yに言わせると、そんなにひどい目に会わせちゃいけない、なのです。
随分ひどい目に会っているので、無理からぬ事です。