2013年7月17日水曜日

山の報告です その四十四



 下らない疑問の続き。天気がこうなんで、皆さんゆっくりと出発したのだろう。下る人も居れば、大滝山へ向かう人も居る訳だ。あたしがトップに出発したと思って居たが、中年男性が空身で常念方向からやって来た。
男性「大天井から先は残雪で行けないと聞いたので、常念ピストンにしたんだ」
 聞いてねえよー。確かに此の稜線でも残雪は多い。奥はアイゼンが必要なのだろう。
 小鳥が横切った。あれ、何の鳥だ。するともう一羽、あ、ライチョウの仔だ!突然親が飛び出て来て、あたしの前でキェーと鳴き、羽を半分広げてヨタヨタ進む。あたしが進むと、其れを繰り返す。仔を守って居るのだ。
 健気で有る。自分を犠牲にして仔から敵の気を逸らして居る。「大丈夫だよ、何もしないから」と呼び掛けても通じない。前方から登山者が来たら、さり気無く横へ逸れた。
 彼らの擬態は聞いては居たが、ターゲットになったのは初めてだ。あたしの人相が悪かったのかな?
 雨は上がった。常念が眼前に立ちはだかる。


  常念に立った時は少々視界も回復した。穂高方面は雲だけど。


 此処で大休止と思って居たが、即下ってテントを張る。昨日で懲りたので、二本のアルミペグは確り刺し、プラペグもケルンを造る勢いで石を積んで、頑丈に仕上げる。
 今回は缶チューハイの外に、特性焼酎を担いで居る。大分の長期樽貯蔵限定原酒で43度だから、凄い。開けるとブランデーの三分の一位の香りが有る。舐めると、トロリとした味わいが堪らない。其れをチビチビやる。
 此の夜は、風にも悩まされずに、十一日の朝を迎えた。平野部と常念山稜は晴れて居るが、穂高側は雲なのは変わらない。
 小屋に顔を出し、タクシーの手配をして一ノ沢道を下る。暫くは急で有る。此処で腰上のラッセルに苦しんだのだなあ。水場で顔を洗い、冷たい水を飲む。美味い!振り返る稜線は晴れだが、穂高は雲の中だろう。


 下り切るとタクシーが待って居た。穂高駅へは歩かずに済む。楽ちんだなあ。
 松本駅は一番線到着。松本電鉄と同じホームだ。依って、行きと同じ蕎麦屋に入って、山帰りの定番天玉蕎麦を注文する。
 キオスクで缶チューハイを購入、空いた梓で八王子へ。うつらうつらしてると到着。町田に着いて驚いた。暑いのではなく熱い!
 駅から家へ歩いただけで、汗みどろになって、靴紐を解く間にも、汗が靴にポタポタ落ちる。楽園から、現実に帰って来たのでした。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

ライチョウ親子、可愛いですね!!!
常念岳山脈も、蝶が岳も大天井岳も大きいですよね。限られた日数で、最大限によく山歩きしてこられましたね。「最高の楽園」から、現実の世界へ、、、実感がこもっています。まさに、真実ですよー!

kenzaburou さんのコメント...

ギャップの大きさに、びっくりします。何度も何度も経験しているのにねえ。