2013年7月14日日曜日

山の報告です その四十三



 あたしがトップにテントを張ったので、後からどんどん登って来る。其の頃、あたしはテントに入って寝そべって居た。五人程のパーティが幕営の準備を始めた。若いメンバーが遅れて到着した様だ。
若者「此れは、ヤバいっすよ!」
 景色が素晴らし過ぎるって事だ。
リーダー「あの頭を雲に突っ込んでるのが奥穂だ。右の鞍部に去年の小屋」
若者「本当、凄いっす!」
 其処へ中年男性が声を掛けた。
中年「あの、穂高はどれですか」
リーダー「え、穂高?」
 誰でも驚く。穂高が眼前一面に展開してるのだから。リーダーが「ほら、正面です」と、一通り説明して居る。
 確かに蝶ヶ岳は入門編で有る。其の思いを新たにして居ると、別のパーティに誰かが、何処から来て何処へ行くのか、と訊くのが聞こえる。徳沢から登って来て幕営、明日は同じ徳沢へ下って帰る、と答えて居る。へー、昨夜はご一緒だったんだ。
 ゆったりとした午後は良い。問題は夜から風が強まった事だ。テントがバタバタ煽られる。其れは良い、慣れっこだ。好い加減なテントの張り方なので、支えるのは荷物とあたしの体重だ。裾は持ち上がり放題なのだ。
 其の上明け方からは雨。十日の朝、コーヒーを飲んで一服つけ乍ら、「風雨の縦走か、寒いだろうなあ、ズボンを穿くかな」、と考えて居ると少し明るくなって、雨音が消えた。そら来た、さあ、飯だ!!! 現金なものだ。結局山はお天気商売なのだ。
 撤収が騒ぎだった。パッキンを済ませてザックを出すと、テントは風船と化した。表に出て丸めたマットを置くと、風に吹かれて転がって行く。「あ!」と思っても追っては行けない。テントを放したら空中高く舞い上がって、もう会えないのだ。
 慌ててテントを潰してザックを重石にし、マットを探す。マットの行った先は東斜面だ。諦めて居たが、斜面の這い松帯に突き刺さって居て、無事に回収。とてもラッキー!マットを失えば、石の痛さで寝られないかもなの。
 楽しみにして居た縦走路は、ガスの中。風は寄り掛かれる強さ。ヘン、何時ものこった。雨が無いだけ増しってもんだぜ。
 と、風が弱まった。同時にパラパラと雨。こうなりゃあ、どっちだって良いのさ!
 中年夫婦が抜いて行く。幕営具を背負って居る。速いなあ、あたしもあの年頃はそうだ
ったんだ。三人の若いパーティが抜いて行く。小屋泊まりの装備だ。え、抜いたパーティは無いのかって?無いよ、抜かれるだけだ!後、二人の男性パーティに抜かれた。
 何で三パーティにしか抜かれないのだろう。擦れ違うパーティの方が、倍以上に多い。と、どうでも良い疑問は続きます。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

素晴らしい写真!!!ほんとうにこれはやばいっす!美しすぎます。空気が澄み渡って、よく晴れましたね。風が強かったのですね。本当に良いときに行かれましたね!!!

kenzaburou さんのコメント...

穂高が見えたのは、蝶に登った日だけだったんですが、一日でも見れて、本当にラッキーでした!!
其の1日しか、穂高は姿を現さなかったんです。