2012年1月15日日曜日

休題 その八十四


 「サヨナラダケガ人生ダ」とは川嶋雄三監督の台詞だが、彼の代表作「幕末太陽傳」が日活創立100周年事業としてデジタル修復して上映したので、妻と此の正月に観に行って来た。
 勿論単館上映で有る。あの単館の雰囲気は独特で、シネコンでは決して味わえない。モ
ギリ嬢(死語?)が切符を売るのは昔の侭。
 昭和32年封切りだが、今でも新しい。テ
ンポの良さには改めて驚かされた(前にも観て居たので)。あの品川の風景、此れは今で再現可能だろうが人々の動きは、多分再現不能だろう。
 細部に迄考証が行き届いて、見事に当時を表して居る。流石、100日本映画を募った
ら、第5位になった作品で有る。因みに1位は「7人の侍」だった。
 笑わせる中にも哀愁が漂い、フランキー堺はこんなに名優だったのか(名優だよ!)、
と驚かされる。
 彼演じる処の、落語の居残り佐平次より借
りた主人公佐平次、手八丁口八丁、抜群の頭の回転で難問をどんどんさばいて行くのが痛快だが、ラストに出て来る、頑固な田舎者には歯が立たないのが面白い。
 其のラストだが、余りに有名な逸話なので改めて書くのも何だけど、ひょっとして知ら
ない人が居るかも知れないので書いておく。
 佐平次は座敷牢から、主人の倅と其の愛
人(?)を逃がし、自分も逃げるのだが、川嶋監督は撮影所の鉄扉を開いて、其処から現在(昭和32年当時)の街を走って逃がすつもりだったのだが、スタッフ、出演者の全員が理解出来ずに反対し、為に普通のラストになった。
 そうでしょうとも。あたしが10歳の年だ。川嶋監督のセンスが進み過ぎて居たのだ。後
年、フランキーは監督の案にしとけば良かったと悔やんだそうだが、後の祭りとは此の事。

4 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

フランキー堺の「わたしは貝になりたい」も、良い演技でした。忘れられません。

kenzaburou さんのコメント...

確か、芸術祭でテレビ上映でした。
フランキー堺は真に迫り、可哀そうで辛かったです。

匿名 さんのコメント...

「サヨナラダケガ人生ダ」
バカボンのパパは未だに、41歳
これでいいのだ

  悪戯っ子拝

kenzaburou さんのコメント...

悪戯っ子さん

「サヨナラダケガ人生ダ」

確かに、これで良いのだ。