2010年8月7日土曜日

閑話 その五十三

DH000017

 

 

 石雪崩のBと、前穂高から下った。二昔半になる。前日は奥穂の小屋の幕営地にテントを張った。其処が狭いの。しかも切り立った場所で、奥穂の肩だなあ、と如何にも納得した覚えが有る。
 又其の前日は横尾で幕営、北穂へ登り涸沢槍を経て奥穂の肩へやって来たのだった。
 さて奥穂の朝。真夏なのに寒い。流石三千メートル、息が真っ白いのがとても嬉しい。十八度は低いのだから、麓が二十五度の熱帯夜で茹だって居ても、こっちは七度なのだ。ふっふっふ、幸せですなあ。短パン姿で震えて居たって、其れが何さ。歩き出せば暖かくなるんだから。
 幸いにも、全行程好天に恵まれ、快晴の下奥穂に立ち、のんびりと前穂へ向かう。
 流石お盆の真っ最中、前穂には登山者が群れて居た。何処から湧いて出たのだろう。え、お前等もそうだろうって?ご尤も!
 下りに掛かったは良いが、あの急な尾根路にはずらーっと登山者が取り付いて居る。
 昔の事なので(二十五年前)私もBも脚が速かった。ザックが大きくても速かった。すると、前の人が気配を感じて路を開けてくれる。「済みません」と声を掛けて抜くと、次のパーティが路を開ける。と、又もや次の人が路を開ける。
 結局、私とBは「済みません、有り難う御座います!」と叫び乍ら急降路(?)を走り下る羽目になっちまったのだ。偉く大変なのだが、モーセの前に割れて行く紅海の状況なので、今更止まるに止まれず、必死に頑張った。我々とモーセとの大きな違いは、後から追って来るエジプト軍が居ないと言う事。
 じゃあ、急ぐ意味は全く無いんだよね、紅海が目の前で割れてもだ。
B「待って!何で急ぐんだよ」
私「だって、皆避けるんだから」
B「普通に降りれば良いだろう、疲れるし、危ないじゃないか!」
 至極尤もだ。急ぐ旅では決して無い。エジプト軍は追尾して無いし。
私「オーライ、横に避けて休もう」
 流石Bで有る。放っときゃあ上高地迄走り降りる事になっただろう。其れは余りに過酷な行為だ。急な岩の尾根だし。善い処で声を掛けてくれた。尤も、Bも限界だったのだろう。斯く言うあたしも殆ど限界だったのだから、阿吽(あうん)の呼吸ですかな。
 脇に避けて一服つけて、後は普通に何気無く下りました。
 分かってくれますか?前の人がどんどん避けてくれたら、期待(?)に応えざるを得ないでしょう、貴方でも(え、違うって?)。確かに、危なくて辛かったけど、私は其の手の馬鹿なんです、へっへっへ。
 上高地に着いて、バスに乗れば東京に帰れるのだが、テントを張って一泊した。勿体無いでしょう、焦って帰る必要は無いのだから。

4 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

すごいですね。 接写で撮った キンポウゲか、シナノキンバイの花でしょうか、ミツバチが蜜を吸う瞬間をよく捉えましたね。F2ですか、GEですか?
快晴の穂高縦走、、、ダンゴ状になった尾根を 大きな荷物の「できる」人がどんどん 越していく様子、よくわかります。いつも、チェ!!勝手に行け、、と想いながら越されていました。なるほど、モーゼが乗り移っていたんですね。ふむふむ。

kenzaburou さんのコメント...

F2です。未だGEは使いこなせません。

いやー、モーセ(こう書いて、編集者にモーゼと直されました。でも、モーセですよね)程立派では無く、単に、エーカッコしたがり屋なんで、仕方なく走らされて居たアホなんです(恥)。

匿名 さんのコメント...

悪戯っ子は中学~高校の頃、写真部でしたので花にミツバチが留っているのを撮すのが至難の業だと云うことは知っていますが。35mmじゃなくデジカメで連写すると撮れるのでしょうか?

先輩がNIKONやCANONの一眼レフを持っていたので欲しかったけど。あのころのカメラはサラリーマンの1ヶ月分の給与に匹敵する価格でしたね。部長先生はオリンパスペン。安い上に二倍の枚数が撮れるし露出計付。「胸ポケットにはいるからペンと名付けられたのだ」と説明していました。先生は100枚の中から1枚の作品を選ぶ目を養いなさいとか仰ってました。DPEを全部、出来るようになりベタ焼にするのも面倒なのでネガから選んで、スポッティングで修正をかけて四切にしてました。「単焦点で練習するとフレーミングが美味くなる」とも先生はゆってましたね。確かに、ポートレートは100mmが欲しいところですが標準レンズの場合、一歩前に出て腰を屈めたりすると綺麗に撮れるのです。

父のカメラを借りたのですが、何とライカのDⅢにヅマールのF2の玉がついている。部員達はビックリしていたが、50mmの標準レンズのみ。フィルム交換は面倒だし交換レンズは無いし。「新しいカメラが欲しい」と強請ったら(こんな字かくんだ)キャノネット(F2.0)を買っ来た。せめてペンタックスかミノルタが欲しかったので、がっくりしました。がしかし、これが良く撮れるのです。レンヅシャッターの持つ特性で木漏れ日やオネーサンの潤んだ目に星みたいなのが写り込むのです。露出計もついていて補正も掛けられるしレリーズが下についており速射も可能の名器でしたね。中古のカメラ屋に行っても同型機は観たことがありません。

kenzaburou さんのコメント...

悪戯っ子さん

F2の望遠で引っ張りました。
接写だったらハチは逃げるでしょうが!