2010年2月9日火曜日

閑話 その四十二

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 モミソ沢は小さい小さい沢だ。水無川の支流だが、本谷は流石に広々とした所も多くて爽快だが、モミソは違う。
 実は一度も遡行に成功して居ない。何なんだろう。三度目に至っては、又もや“狐に摘まれた“話なのだ。
 三度目に至っては、と書く以上は三度失敗して居るってえのは、ご明察通り。
 初回、やがて本文でアップするKが渡渉に失敗した時で、冬だった。本文の通り、地下足袋を濡らすと冷たくて嫌なので、小滝群を越えた次の滝の前で、左の小沢に逃げ、凹地になった源流から無理やり登り、やがて鹿避けの柵に沿って登り続け、流石のSが音を上げた。
S「ストレッチもやり過ぎだよ!痛くなったぞ!」
 長い急斜面だった。あたしの我侭の為なので、御免なさい(ペコリ)。で、堀山のピークに立ったが冷たい風が強く、偉く寒かった。
 次は単独で、初夏。前回敬遠した滝を登り(濡れても冷たく無いので)、次も右から越えて行くと一寸と嫌なトラバースが有った。巻こうと思い巻いて居るうち、戻れなくなって、気が付いたら、例の柵に沿ってストレッチを続けて居た。トホホホ……。
 三度目の正直、妻と入った。平成二十一年春の事だ。念の為サブザイルも用意して万全を期す。
 前回の滝を右から巻きに掛かった迄は全く問題無い。其の通りに来た。処が嫌なトラバースが表れず、小さな流れを越しやがて尾根となった。
 兎に角モミソ沢に降りねばならない。どんどん下ると、広い河原が近い。明らかに水無川で、しかもモミソ沢取り付き点なのだ。
妻「ね、貴方、間違えたんじゃ無い」
私「……」
妻「あれ、さっきの川でしょう」
私「……そうみたいだ」
妻「大丈夫?貴方最近感覚が鈍ったわよ」
 妻よ、そうなんだけど、そうまで明け透けに言ってくれるなよ、本人が一番ショックなんだからさあ(涙)。
 そうか、あの小さな流れがモミソだったんだ。右から巻いて本流を越しちまったんだ。
妻「え、又今の所を登るの、折角降りたのに」
 嘆く妻を励まし、登って流れに出、沿って行くと程無く初回の凹地に出た。ガビーン!!
 どう言う事?右に巻いたのに、左に逃げた凹地に居る。何処でモミソを越えたの?一瞬のパニックだ。でも、間違い無く其の凹地。
 右に行ったのに左に着いた。妻に説明しても理解不能だろう。大体、其の意味が分からない筈だ。説明すら不能なんだから。
 結局、例の柵に沿って妻にストレッチをしてもらった。すっかり信用を失ったあたし。
 狐よ、覚えとけ、季節が良くなったら、きっと化けの皮を剥がしてやるからな!

5 件のコメント:

チンクちっく さんのコメント...

丹沢とはどこにあるのかしらとググッてみました。

神奈川県の山脈なのですね。

四国の霊峰、剣山の麓で育ちました。
小学校の頃の遠足は、大部分近くの山でした。
そんなところで育つと登山もトレッキングもやりません。
人間っておもしろいものです。

ご夫妻で楽しめる趣味は良いですね。

kenzaburou さんのコメント...

そうだったんですか、チンクちっく さんは剣山の麓育ちなんですね。
土佐へ行く飛行機は剣山の上を通りますが、冬は白く輝き神々しい姿です。

良く分かります、あえて登山をしなくても、其の部分はもう満たされて居るからでしょう。

あたしは東京育ちなもんで、未だに自然を求めて居るので、幸せってえか、不幸せってえか、微妙です。

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

滝を登り、、、濡れても冷たくないので、、、。冷たく感じる人の方が 圧倒的に多いと思いますが、、、。
沢登りも沢下りもさせてくれる、とっても楽しみがいのある沢なんですね。写真、水がチベターィ感じがとっても出ています。そんななかでも ちゃんと生きている魚がいるのでしょうね。

kenzaburou さんのコメント...

面白いもので、小さな流れに、大きな魚影をが走る事が有ります。
幾つも幾つも滝を越えて来たのに、大きい滝も越えたのに、どうしてこいつらが居るんだろう?

聞いた話では、山仕事の人が上流に稚魚を放し、大きくなったら食料にする、有り得る話です。

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

山仕事の人が稚魚を放流、、、さすが、山もプロのやることですね。なるほど なるほど。