2010年2月7日日曜日

色付くダイヤモンド その三

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 双六小屋に戻ろう。寒いので座る気も起きないので、唯突っ立って居る。雨と風のお陰でゆっくりと休める!
 良くしたもので、黒部五郎小屋に着いた時は天候は回復、薄日が差し始めて、目出度い。しかも水場は直ぐ其処、やったね。但し、シーズン外なので小屋は営業して居ず、冬季小屋を使用する。勿論こちとらご承知でい。だから夏用シェラフもシェラフカバーも確り担いで来て居るのだ。
 九州弁の六十位の男性と二人だけだった。以下男性と記す。
男性「良く降ったとですね」
私「寒くて、参りました」
男性「まっこと、凍えたですよ」
 書こうか書くまいかと、一寸と迷ったが、気持ちに引っ掛かって居るので書くけれど、余り良い話では無い。山では全てが綺麗事、では無いと言う意味です。
 男が一人やって来た。関西弁の中年入り口の男性だった。以下中年と記す。
中年「え、小屋はやってへん?難儀やなあ、どないしよ」
男性「自炊ばしよりますか?」
中年「小屋の食事でんねん」
 男性は自分の食料を分け与えた。私はシェラフカバーと、取って置きのお汁粉を(此処で食べるのを楽しみにして居た)渡した。相身互いで有る。今回は私と男性は小屋の閉鎖を知って居たが、次はどうだか分からない(勿論調べるけど)。
 此の夜は冷えた。悪い事では無いので、天候は完全に回復すると言う事なのだ。でも、ペラペラの夏用シェラフだけではきつかった。カバーの保温力とどっこいなのだから。と言う事は、中年氏にとってもカバーが無ければ、地獄の一夜となった訳だ。
 翌朝は弩急快晴、わーい!で、中年氏の所へカバーを回収に行くと無言で返す。何で無言なのかなと思いつつ朝飯を食べて居ると、男性が来た。
 あ、行った、とか来たとか、変ですね。冬季小屋と言っても大きいので、彼方此方に分宿して居たんで、それで無料なのは私にとっては、寒くたって天国です!
男性「あの方、黙って発ったとですよ」
私「え?」
男性「いや、早かね(笑)」
 九州人は偉い。四の五の言わないで笑って済ませる。何をだって?野暮天ですねえ、私に言わせなさんな。とか言い乍ら言っちゃう訳で、情無いったら有りゃしねえ。
 私は未だにあの中年(と言っても当時の私よりは若い人なのだ)の行動は、不思議の一言だ。何で食料をくれ、カバーを貸し、色々気を使ってくれた人達(其の人達も乏しい中から捻出してる)に礼も言わず、無言で去る事が出来るのだろうか?何が楽しくて山に登るのだろう。何が楽しくて人生を……、此の話しは止めましょう。本当に失礼をぶっこきました、未熟ですなあ。私は、九州の男性には死んでも及びません(汗)。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

すごく美しい榛松の姿ですね。湿った山の新鮮な空気が漂ってくるようです。

その中年男 死刑!!!
山に失礼です。山に来る資格などありません。山男同士の義侠心なくして、山に来る馬鹿者、落石で死ね!死刑なのだ!

kenzaburou さんのコメント...

そう言って頂いて胸のつかえが取れた気分です。

Doglover さん、有り難う御座います!!