2010年1月8日金曜日

閑話 その四十

FH000006

 

 閑話十でキスリングについては書いたのだが、どうしても愛着が有って、再度取り上げるのです。
写真は二代目の物で、初代品より薄っぺらにはなって居るが、使い勝手は良い品物だ。フックに紐を掛ければOKと言うのは、とても楽だとはもう書いた。
 唯、幅72Cm(超特大サイズ)は同じなのだが、長さ(高さ)が短い。初代は目一杯詰めると頭より30Cm以上も高くなった。二代は20Cm以下で有る。
 写真でザックの上に見える赤い物は、アイゼンに嵌めたカバーゴムだ。均整の取れた形だが、若い頃の縦走ではこんな荷物では収まらず、此の侭グーンと縦長になっちまった物を背負って居たのだから、今思うと身震いする。30Kgは軽く越えて居た。冬なぞ40Kgに達して居ただろう。あー、恐ろしい……。
 そうなると一気には立ち上がれない。背負ってから一旦四つ這いになって、どっこいしょと立ち上がる。降ろす時は仰向けに倒れてから、腕を抜く。其の腕は痺れちまってんで、全く御苦労な事だ。
 パッキンに技術が必要だとはもう書いた(そして一寸と自慢した)。構造上、と言う程でも無く、大きく丈夫な袋なんだから当たり前の事で、重さがモロに肩に掛かる。腰にも分担されては居るのだが、新型ザックと比べると、肩が辛い。
 因みにキスリングはヨーロッパ産だが、小さい物だそうで、巨大化したのは日本だけ、ヨーロッパ人が日本のキスリングを見て吃驚した、と何かで読んだ。小さく薄くするのが得意な我が国にしては、珍しい事で有る。
 バスに乗る時、規定の大きさ以上の荷物は荷物料を取られる事が有る。昔の山岳部にはキスリングを縦に二つ重ねて縛り上げ、一つの荷物にして仕舞う所がよく有った。新人がウンウン言って持ち込むのだ。
 サイドが有るのは大変便利で、日帰りの荷物位楽々と入る。従って、使用頻度の高い物は全てサイドだ。行動食、水、雨具、ナイフ、セーター、カメラ等々。一々紐を解いて居られないからだ。偉く面倒なもんなのだ。
 其の便利なサイドが、藪に入ると途轍もない邪魔者になる。体から左右に30Cm以上もはみ出して居るのだから、完璧に藪に絡め取られる。藪は鬼門なのだ。
 使い勝手が良く、肩にも負担が少なく、テクニックも不用、藪でも大丈夫(其れは一部の人間に取ってなのだが)。今風ザックに取って代わられるのは、極 て妥当な世の習いなので、キスリングは消えて行くのみ。いや、既に殆ど消えた。
 自分でキスリングを見放しておいて、其れでも消え行く物に惜別の念を抱いて仕舞うのは、歳の所為なのでしょう。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

良い写真ですねー。山々をバックに愛用のキスリングにピッケル。素敵です!!!絵になってます。

kenzaburou さんのコメント...

照れます(汗)。

何と無く撮っておいたもんで、Dogloverさんのお褒めに預かるとは、光栄です。