2009年9月16日水曜日

新婚旅行とキリギリス その一

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 昭和四十九年版、実業の日本社ブルーガイド丹沢、には温泉案内も載っている。最近のガイドブックには無い企画である。温泉専門の案内書へ移行したという事だろう。
 塩川鉱泉(お、有った)、飯山温泉、別所温泉、七沢温泉、鶴巻温泉、中川温泉、道志温泉、湯船温泉、が紹介されている。インターネットで探したら、今でも塩川鉱泉は生きていた。何だかうんと嬉しい。しかし湯船温泉は、消えた温泉となっていた。元は駿東郡小山町に有ったのだ。移り行くのが世の常、とは言え一抹の寂寥感は禁じ得ませんなあ。
 湯船温泉に行った事はないが、母が祖母を温泉に連れて行くというので、ガイドブックで知っていたので紹介した事がある。鄙びた宿が良いと言うからだ(母は帰って来てから、鄙び過ぎだと文句を言っていた。贅沢なんじゃない?)。駿河小山へは、迎えの車が来てくれたそうだ。処が滅茶苦茶に車に酔う祖母は、宿に着く僅かな間にグロッキーになったと言う。
 で、翌日の帰りには旅館が耕運機を出してくれて、その荷台に乗せて送ってくれた。祖母は多少恥ずかしかったが、全く酔わなかった由で、感謝しています。その祖母も、湯船温泉も(そして母も、平成二十年現在)今は亡い。
 で、この章は中川温泉である。四十九年版ブルーガイドでは、一泊二食で二千五百円から五千円とある。
 昭和十七年版、登山とスキー社によると、中川温泉信玄館、一泊二食で三円五十銭、神縄バス停から徒歩一時間十分とある。安い!でもそんなに歩いて(しかも登り道)、誰が行ったのだろう?しかも戦時中の本だ。
 私も思い違いをしているのだろうが、戦争だからといっても、生活がひどく窮屈になったのは都会の現象で、田舎(当時は足柄郡も立派に田舎だった)はそうでもなかったらしく、証言者は多いので、不精でない方は調べて下さい。
 中川温泉は信玄の隠し湯と呼ばれているが、足柄上郡はどう見ても北条領である。ゆっくり傷病兵を休ませる環境とは思えないのだが、戦闘中に、一時的に使用した事は有るかも知れない。いずれにせよ洒落たうたい文句と解釈するのが妥当だろう。
 初めて中川温泉に行ったのは、新婚旅行である。エベレストやマッキンレーより丹沢が良いという思想の持ち主の私なので、新婚旅行にハワイ?(当時の定番)正気かよ!と思うのは、当然でしょう?で、神奈川県をぐるぐる回ったのだ。良く女房が文句を言わなかっただって?今になって言ってるよ!すっかりグレちまった。教訓、女は怖いのでお互い(誰の事?全ての男です)注意しましょう。
 その時泊まったのは道の上に有った宿だったが、今は無いのだ。一寸と寂しい。
 (新婚旅行とキリギリス その二へ続く) 

4 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

新婚旅行に丹沢の山々、、、むかしからKENZABUROUさんは、とってもシブーい方だったんですね。ふたりで取る最初のお食事も、コッヘルで作ったインスタントラーメンぶっかけごはんだったのでは???
奥様、ぐれて家出されるなら 今からでも遅くない。引受人になりますよ!

kenzaburou さんのコメント...

あっらー、何を仰います。
グレた妻に油を注いでどうされます。
家出されたらさあ大変、山では何でもこなすが里では無力なあたしゃあ、オロオロするばかり、気の毒だと思って下さいまし。
結論、女は強し、されど男は……です、情無いですなあ。

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

素晴らしい写真!!! ごめんなさい。嫉妬とヤッカミでした。新婚旅行でKENZABUROUさんの「なわばり」の山々を すっかり見せてもらった奥様は 本当に幸せな方です。山に連れて行ってくれる人がいて うらやましい。私が好きになった人は みんな単独行の人ばかりで、「女なんか連れて行けるかよ!!!」というような人ばかりで 誰も山に連れて行ってくれなかったものだから、、、。

kenzaburou さんのコメント...

いえいえ、あたし流の訳の分からない冗談なんで(汗)、済みません……。
もっと分かりやすいジョークを学びます(再び汗)。