2023年12月2日土曜日

閑話 その四百三十二

 


 今年の十月六日の出来事です。那須の朝日岳で四人も亡くなったが、記憶に残ってる方もいるでしょう。栃木県の男性一人と女性二人、大阪の男性一人が犠牲になった。写真は朝日岳だが借り物です。

 那須の山は標高こそ1000m台と低いものの、風が強い事は物凄い。風だけは3000m級の山に引けを取らない。冬に頑張ったが、ロープウエイ乗り場の一寸と上が限界で引き返した事があった。とても歩ける風ではなかった。

 十月の遭難があった日は初めての冬型気象だった。依って強風が荒れ狂っただろう。亡くなった四人は六十代と七十代。無事生還した人の話に依ると、立っては歩けず、風が弱った時を狙って岩に縋りつつ下ったと言う。その時倒れている女性を見つけたが、どうにも出来なかった。そうでしょうとも、座っていても倒される風だと言うんだから。

 知らせを受けて救助隊が行ったが、強風で現場へ到達できずに救助は打ち切り、翌日行った時には四人共駄目だった。遭難日の風速40mを越えていたらしい。無理をすれば二重遭難も有り得る、いや、あると言った方が正しい。打ち切りは当然です。

 40mを越えた風は、歩行どころか這う事さえ困難である。南アルプスの冬の上河内岳を目指して稜線に出た時その風を受けて、とっとと茶臼岳避難小屋に引き返した事があった。下山の準備をしていたら一足前に出て行ってた二人連れの男性が雪塗れになって帰って来た。這って頑張ったが力尽きたと言う。左程に風の威力は恐ろしい。風速1mで体感温度は1℃下がる。風速40mでは40℃下がるのだ、ね、恐ろしいでしょう。

 大阪の男性は前夜泊まった三斗小屋の主人から下山を勧められていたと聞く。何故無理に登ったのだろう。遠くから来たのに、との思いは分かるが、山なんて命に代えるものではなかろうに。

 四人のご冥福を祈るばかりです。

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