2023年12月8日金曜日

休題 その五百二

 

 「ユニバーサル25」と言う実験をネット記事で見つけた。1970年頃のアメリカの動物行動学者の実験である。ネズミを最大3840暮らせる領域を用意して、最適な温度、無制限な水・食料の提供、病気の予防をして、オスメス各四匹を住まわせ実験は始まる。四組のアダムとイヴである。要するにネズミの楽園ですな。

 ネズミ達が環境に慣れ巣造りをし子供が生まれる迄に百四日、この期間をフェーズAする。

 三百十五日目、ネズミは六百四十匹となった。フェーズBである。

 そしてネズミは幾つもの群れを造り、集団生活をし始めた。狭い所に集まってぎゅうぎゅうに暮らす。それに加わらないネズミは他者と関係を持たず唯食べて寝ている。詰まりニートネズミである。ニートネズミは餌を食べに行くと攻撃され、夜中にこっそり餌を摂る様になった。フェーズCである。

 フェーズCになると集団ネズミは攻撃的になり、餌は豊富なのに争いが頻発、メスも攻撃的になって自分の子供を守ろうとしなくなる。守るどころか攻撃して巣から追い出す。追い出された子ネズミはニートネズミになるしかなくなるのだ。

 この育児放棄された子ネズミが親の世代になってからがフェーズDである。社会性を学ばなかった彼等は、テリトリー争いも繁殖も行わず、ただ食べて毛づくろいするだけの生活をして、二百二十匹になっていたネズミは急速に減って九百二十日目に全滅した。

 「ユニバーサル25」とは二十五番目の実験であり、過去二十四回が思う様に行かなかったので規模を拡張して行ったものだ。

 人間はネズミではないのだが、先進国は少子化が当たり前になっていて都市への人口集中も同様である。何だか人類の行末を暗示してる様な感じだ。ユートピアでも争いが絶えない。どこがユートピア? 今日本はユートピアに近づいているだろう。ユートピアは破滅への玄関だったのですか。人間はネズミじゃないんだけど、同じ哺乳類だし。

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