2023年7月6日木曜日

閑話 その四百十二


  昔の登山ブームが去って山が森閑として三十年近く経ち、中高年が山に戻り、山ガールが現れて登山ブームが再現された。その中高年登山の危うさの最初の警鐘が立山遭難だ。写真は借り物です、済みません。

 1989年十月初旬、室堂から剣御前小屋へ向かった関西の税理士十人のグループが遭難、八人の犠牲者を出した。何度も言って恐縮だが山はお天気商売、天気さえ良ければ全員無事に帰宅していた筈だ。

 室堂から一ノ越は順調、雄山へ登り着いた時には雪が降っていたと言う。雄山は一ノ越から一時間で登れる立山の最高峰だ。雪が降って来た♪ 歌なら良い。歌でなく3000m山頂で雪は拙い、途轍もなく拙い。

 メンバーの一人の六十代男性は足の痙攣を起こしていた。前進を考える事すら愚かだ。亡くなった方を鞭打つ気はない。事実を明らかに記したいだけだ。え、別にお前の役じゃないって? 分かってますよーだ!

 雄山から引き返せば一時間以内で一ノ越へ下れる。山小屋もある。何で降雪の中を前進したのだろう。しかも体調不良者もいたのに。

 目的地だった剣御前小屋に予約していたのを守ろうとした、え命懸けで? リーダー不在現象だと思う。決定者がいなかったのだろう。体調不良者も「大丈夫です」と言うのがパターンだ。心配を掛けまいとして、大丈夫じゃないのに大丈夫だと言う。

 何となく前進を始めたら本格的吹雪になった。何と運の悪い話だ。せめて雄山で吹雪いてくれれば引き返しただろうに。十月頭だ、吹雪への備えはしてっこない。

 結局八人が稜線上で亡くなった。小屋へ助けを求めに行って、途中で倒れた二人だけが助かった。倒れているのを朝日を撮りに来た小屋の登山者に発見されたのだ。この日が雲っていたら写真を撮る人はいず、二人も助からなかったかも知れない。天候悪化の恐ろしさを改めて認識させられた遭難でした。

0 件のコメント: