2022年7月7日木曜日

初めてのお使いとか その三


  此れは聞いて居たので驚かない。雪を蹴り蹴り直登する。稜線に立っても冷たい風のみ、雨が上がったのは有り難いが、真っ白なガスで有る。景色なんぞーは夢のうーち

 其処でたっぷり、アイゼン歩行と滑落停止動作の練習をする。訓練だから、景色は無くても構わない。さて翌日、北穂登頂の日だ。昨日迄の悪天候は去った。快晴で有る。

 こういう状況は、書いて居てもワクワクするのだから、さぞや若者達も張り切った事だろう。え、自分の事だろうって?何せ余りに遠い昔なので、ついですよ。

 涸沢迄は二日前に来た道。テント村に踏み込むと突然強風が襲い、前日の新雪が巻き上げられて吹雪状態となった。テントの諸君も慌てふためいて居る。

I「大塚、ヤッケを着ろ」

私「はいよ」

 今迄の青空と暖かさが一瞬にして消え、一気に真冬になるのを知ったのが、此の時だ。初っ端にしては貴重な経験だ。其れから何度か同じ目に会ったが、ああ、あれだなと直ぐに対処出来たので。

 幸い突風は北穂に取り付いた時には静まり、元の青空に戻って居た。アイゼンを利かせて真っ白な雪を踏み、黒い程青い空の下を登る。嘘じゃないか、と当時の私は思った。素晴らし過ぎるって事。

 ピークで迎えてくれた白銀の山々。素晴らしきかな山!! とても恵まれた初めてで有った。

 翌日は槍ピストン。此の日も快晴。其の翌日は本隊が来る日だが、私は所用の為Iを残して上高地へ向かう。時間的に本隊の諸君に会う事は出来ない。少し心残りだがバスに乗って新島々へ下る。

 本隊は其の翌日蝶ヶ岳へ登ったのだが、残念乍ら春の晴天はそうは続かない。ガスの中の登山だったそうだ。入山日が快晴で景色を堪能出来ただけ増しだった、との事。(続)

0 件のコメント: