2022年7月16日土曜日

初めてのお使いとか その四

 


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 さて次は初めての冬山だ。三国山の章「冬山のツェルトで三人暮らし」に一寸と書いたし、外でも何度か触れた。

 車で入山口へ向かう途中、凍った林道で滑り、谷へ落ちかけた事も前述。メンバーはN、K、私で有る。冬山経験者はNのみ。彼は某山岳会に所属し、先鋭的な登山に足を踏み入れた処なのだ。三十歳の正月で有る。

 凍った川原歩きから始まった。晴れだった。前後に幾つかパーティが見える。背中には30Kg近いキスリング。最初に驚いたのは、時々雪が真っ赤になって居る事だ。

私「N、此の赤いのは何だ」

N「ああ、小便だよ」

K「え、真っ赤だぞ」

 オーバーに言えば血の小便だ。結構過酷な世界なのでは、と私とKはぞっとしたが、Nは平気な面で有る。北沢峠の登り口に近づくと、白く輝く甲斐駒ヶ岳。我々の目指す山だ。

 峠には難無く到着、若かったのですなあ。テント場は一寸と下った所に有る。脇に小さな流れが有って、凍って居ないのだ。気温はマイナス10℃近いだろうに。明け方にはマイナス20℃近くになる筈だ。

 既述の通り、我々はツェルトを張って入ったが、三人と装備がどうやって収まったのか、全くの謎で有る。きっとギューギュー詰めだったのだろう。動く時は声を掛けあって、暮らしたに違い無い。

 Nよ、何でツェルトなんだよ、外のテントは皆冬テンで二重張りなんだぞ! ま、言うだけ無駄だ。雪の窪みでザックに足を突っ込んで腕組みして寝るよっか、遥かに良いと思って居るんだろう、きっと。

 Nに水汲みを命じられ、コヘルに流れの水を汲んで来た。コヘルを置くとビシビシと凍り始め、見る見る氷の塊と化したのには驚いた。過冷却水が一気に氷結する様を見た訳だ。まっこと化学の実験ごたあるですよ。(続)

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