兎に角寒くて冷たくて痛い(足が)、が第一印象だった。北沢峠あたりでは、丹沢の冬景色と大差は無い。但し、寒さはワンランク上だ。標高が2000mを越えて居るので当然だろう。
翌日はアタック日。晴れと曇りの中間。残念乍ら景色は殆ど無い。森林限界を越えると風は刺す様だ。登山靴を通して冷たさが伝わり、歩いて居るのに足先が痛い。
私「Nよ、足が冷たくて痛いんだ」
N「そうだろう」
言うだけ無駄だ。次からは対抗策を考えねばなるまい。
甲斐駒頂上には数パーティが居た。吹き付けるガスだった。頂上には殆ど雪が無い。吹き飛ばされて積もらないのだろう。見る景色も無いので早々に下山となる。そして待って居るのは、みすぼらしく狭くて、且つ凍ったツェルトなのだ。
わー、素晴らしい冬山、とは言えない初めての冬山だった。それでも充分満足した。冬の甲斐駒に登ったのだから。其れだけで全く不足は無い。冬山とはこんな感じ、と自分なりに掴めた訳だから。
お次は、Yの初めての春山としよう。私と一緒に十年以上山や沢を歩いて来たから、もう良かろうと提案した。
私「Y、春山に行こう」
Y「え」
私「大丈夫だよ。装備は必要だけどね」
私がIに穂高へ誘われた時と同じだ。結局行く事になり、ピッケル、アイゼン、スパッツ等を一緒に買いに行った。道具マニアのYは、装備一式を手にした時に、はっきりと腹が決まった事だろう。
最初なので、無理無く平標を目的地とし、前夜に越後湯沢から新道入口迄タクシーで入って、広場の雪の上にテントを張った。私が四十五歳、Yが三十七歳の春で有る。
翌日は曇天だった。ま、上等と言って良かろう。アイゼンワークは口頭説明のみ行い、後は実地訓練だと、幕営具を担いで登り始める。相変わらず好い加減なこった。(続)
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