2014年10月17日金曜日

閑話番外 その八十一




 閑話百三十七、百三十八でYと塔に登った話をした。其の時のあたしは、短パンに地下足袋、滅茶苦茶古いリュックを背負った変なおっさんだったらしい。
妻「あなた何、そんな恰好で行くの?」
私「何が?」
妻「変よ!」
私「え?」
妻「すっごーく恰好悪い!」
 あたしゃあ良いかっこしに山へ登るのでは無い。だもんで妻の言い分が分からない。
私「それがどうした?」
妻「電車に乗れない、着替えたら?」
私「……ああそう?行って来ます」
 確かに変だろう。変なバーゲンのカッターシャツに変な半ズボン、むき出しの貧弱な脛に軍足に地下足袋。
 それでロングソックスなら、多少は許せる。そんなこたあ分かってるって! 今は汚いおっさんだろうけど、二十代の頃は、ちゃんとそれで様になってたんだ。
 “柄でもない話”にすりゃあ良かった。妻は結局里の人だ。里の感覚で見る。あたしが山に行く時は、里と別れる時だ。オーバーだったですね。でも其れに近い感じは常に有る。
 で、妻の言う変な格好で大倉尾根を登った。小草平で休んだ。突っ立て一服点けて居たら、登って来た四十代の男性に声を掛けられた。
男性「恰好良いですねえ」
私「あ、いえいえ」
 あたしが途中で抜いた人だろう。ほらね、山に入ると決まるんだって、里では変に思える格好でもさ。環境が変わるのだから。
 へへへ、柄でも無い。詰まんない戯言、何時もの通り失礼しました。

0 件のコメント: