2013年3月9日土曜日

我がロマンチック街道 その十三





 ヴィジターセンターから先は今迄の静けさが嘘の様に、人が居る。雪の尾瀬も人気なのだろう。子供も喜んで雪と戯れて居る。
 Yは峠で、監視員から何処から来たかと聞かれ、十日町(丹後山も十日町から入る)から入山したと答え、監視員から偉く感心されてしきりに照れて居た。私は其のやり取りを聞き乍ら、一寸と離れてスパッツを外して居た。其れが未だに、変に鮮明な記憶となって残って居る。
 村営バスで片品村へ出、温泉に入って(ま、気持ちの良かった事!)蕎麦とビール、そして沼田への路線バスに乗り込んだ。今迄の、ひたすら雪の中の歩行と幕営も、終って仕舞うと、あっと言う間の感じだ。そして湯上りの一杯機嫌でバスの中に居る。何だか不思議な気分だ。
 かくして私のロマンは完成した訳だ。山中十八泊、越後湯沢駅に四泊、の長丁場を八つの区間に分けて、二十年以上掛けてやったのだが、冷静に視ると一寸と掛け過ぎでは有る。明らかに間が抜けて居る。
 確かにそうなんだけれど、私個人に取ってはライフワーク見たいなもんなんで、時間が掛かっても全く構わないのだ。逆に、完成しちまったら、一抹の寂しさを感じて仕舞うのが面白い処なの。何せライフワークが終ったのだから。
 尤も、あの長大な白銀の山々と、縁が切れた訳では無い。何時でも、何処にでも行きたい放題なのだ。但し、若い頃の日程で予定を組む訳には行かない。そうねえ、倍は見る必要が有る筈だ。そしてきっと、又いそいそと出掛ける事なのだろう。
 結局私には、あの上越の雪山自体がロマンで有ったのだ。縦走達成がロマンだったのでは無かったのだ。勿論全縦走もやりたかったけれど、出来なくても何の問題も無いのだと、書き終える寸前に気付いた次第。
 だから、景鶴ははなから相手にして居ない、なぞと書けたのですなあ。我が永遠の恋人丹沢、我がロマンの上越、と言う話でした。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

二十年余りかけて、上越の山々の縦走路を全部、ぜんぶ ゼンブー!!!走破! まさにライフワークです。すごい。 読んでいても、ロマンチック街道はとってもヘビーでしたー!!!温泉で終わったから、良かったけれど。渋いっす!

kenzaburou さんのコメント...

旅の終わりは温泉ですよ!!
そして、湯上りに蕎麦を食べてビールを飲むのです(涙)。
泣けて来る感じなんです。