2011年4月20日水曜日

下駄より地下足袋 その二


 三昔前迄だろうか、山で地下足袋の人を見かけたのは。多くは山小屋の人だったが、沢をやる諸君は大概地下足袋に草鞋だった。今は渓流ブーツ(で合ってたっけ?)が主流の様で、地下足袋は殆ど姿を消した。
 絶滅したのでは無いと推測出来るのは、登
山用品店で草鞋を売って居るからだ。それに、沢を詰めて縦走路へ出るあたりに草鞋が棄てて有るのも時々見掛ける。
 と言う事は未だに地下足袋族が生息して居
る訳で、絶滅に瀕した希種なのだから、皆で大切にするべきで有ろう。え、違うって?鬼!
 四昔前に遡れば、沢ばかりで無く、尾根や
縦走路も地下足袋で歩く人が、結構居た。極(ごく)普通の山の風景で有った。今なら珍らしがられるのだろう。大体山小屋関係者は間違い無く地下足袋姿だった。今は何だろう、長靴?南アルプスでは無い。丹沢では、えーと、トレッキングシューズ。えーん、何だか悲しいよお。
 で、現在。地下足袋は愚か、皮の登山靴す
ら希種となりつつ有る。変わり行くのが世の中、無常とは此の事です。
 今の主流はゴアで有る。技術の進歩は斯く
の如し、歴史有る皮の登山靴すら簡単に駆逐するのだ。確かに軽くて手間が掛からず、カラフルで如何にも新しい、と思わされる。
 革靴はメンテが必要だ。それも汚れを落と
してから陰干しをし、皮には保革油(け、変換も出来ねえ)を擦り込み、ビブラムとの境の皮には亜麻仁油(変換出来た!)を塗って仕上げる。偉く面倒だ。ゴアなら汚れを落とせば終わりだろう。凄い!
 其の優れ物のゴアの欠点は弱い事だろう。
五年は保つまいて。春の雪に蹴り込んで居たら、三年がやっとじゃないかと思う。あ、此れは説明が必要ですね。
 春山の急斜面は、靴を雪に蹴り込んで足場
としつつ登って行くので、雪が硬い時は、二度、三度と蹴り込むのだ。何でそんな事をするかってえと、路は無いから雪を真直ぐ登るしかなく、兎に角力任せに足場を造りつつ、直登するのだ。
 上手く巻けって?雪ではトラバース(雪面
を横に、或いは斜めに横切る事)の方がずーっとヤバイの!!!!だから、仕方無く直登せざるを得ないのだ
 意味不明?トラバースをやって見れば、一
発で分かるのだ。うっかり滑れば一気に滑落し、場合に依ってはお葬式、最良の場合でも、偉い苦労と危険な思いをしてをして登り返すのだ。あー、嫌だ嫌だ。
 で、雪を蹴りこむ足跡が見事なのだ。たま
たま先行者が居れば、其のパーティが何人であろうと、綺麗な足跡(蹴り込んだ跡)がずーっと続いて行くのだし、私の前に人が居なければ、振り返ると綺麗に足跡が続いて居る。冷静になれば結構感動ものでは有るが、其の時は必死なんで、其れ程は感動しない。正確に言うとしてられない。
 (下駄より地下足袋 その三へ続く)

4 件のコメント:

悪戯っ子(デラシネ) さんのコメント...

ビブラムという語すら分からない悪戯っ子は職業柄、地下足袋といえば鳶さんが使うものという意識しかない。バイトでスキーパトロールしていたときに雪崩が起こりそうな斜面を長靴に輪カンジキ(変換不能;新潟の人たちは「かっちき」と呼んでいた)を履いて並んで上から下に踏み固めるのです。
よく考えると、かなり危険な作業です。もしこの作業を地下足袋と草履でしたならば雪に埋もれて窒息すること間違いなしです。実際にスキーのコースを外れて深雪を楽しんでいた(ピステの魔術師と呼ばれてました;完全に過去の話です)ときに、スポンと落ちたらホワイトアウトしました。何が起きたか理解してスキー靴を外しストックで空に向けて穴を開け、やっと首が出たのでほっとしました。でも其れからが大変です。つぼ足なのでストックで周りを固めてからスキー板を取り出すのに一時間はかかったと思います。ゆめゆめスキーコース外を滑ってはいけません。馬鹿さゆえのことですね。これを「悪戯っ子、世に憚る」・・・といいます
でも、けん様も危ない目に遭ってるみたいですね。

kenzaburou さんのコメント...

ビブラムとは、登山靴の底のゴムです。他のゴムやウレタンを使って居る靴も多いです。

首まで埋まると、偉く脱出に苦労するでしょうね。何たって雪は足がかりにならないんだから。
おまけに板も掘り出すんだから、1時間でやったのは立派です。
ま、昔だからで、今なら3時間ってとこですな。はっはっはっは。

おっさん さんのコメント...

はじめまして

 私は今でも地下足袋です。ハイキングでも履いています。軽くて歩きやすいからですが、もう42年履いています。最初は沢登りのアプローチと沢を詰めあげて履き替えてました。沢では足袋とワラジです。
 冬以外でもいまだに地下足袋です。

kenzaburou さんのコメント...

おっさん(とお呼びするしかないのでご容赦)はじめまして!

居るものなんですねえ、地下足袋派が。
心強い思いです。
こんな便利な物を何故皆さん履かないのかと不思議でした。

嬉しいコメント、有り難う御座います。