2010年11月22日月曜日

閑話 その六十一



 あたしはツエルトを二張持って居る、とは前に書いたかも知れない。灰色の奴は通気性抜群で、冬山でも氷の花が殆ど咲かない。蒸気も逃げて仕舞うのだ。其の代り水も通す。従って雨の時はびしょびしょになっちまう。
 二十代の後半で購入したので、四十年弱前
の骨董品で有る。しかし、未だに現役で働いてくれて居る。此のタイプは、あたしの以外は見た事も無い。とっくに杯盤なのだろう。
 もう一張はグリーンの薄手で、前出のイラストだが、右のがそうで、三十代半ば
の購入だから三十年弱前の、此れまた骨董品だ。
 詰まりあたしは、実用的骨董品に囲まれて
生きて居るのですなあ。
 こちらは通気性が
無い。冬には氷の花が満開となる。其の代わり雨には強い。
 驚いた事に未だに現役で、山でも見かける
し、店でも売って居る。成功した一品と言う事だろう。何せ軽いし小さくなるし、不時の為のツエルトとしては、申し分無い。現役なのは至極当然なのだ。
 何で其のベストセラーのツエルトを買った
かと言うと、灰色のツエルトをIに貸して、其れっきりになったからだ。アイゼンとピッケルも、其の時Iに貸した。勿論Iは全て持って居るが、後輩用だ。
私「I、ピッケルはどうした」

I「あああれか、切り詰めて使ってる、便利
してるよ」
 切り詰めた?畜生、岩用にしやがったな。

私「アイゼンは?」

I「消耗した。役立ったよ」

 消耗した?もう無いって事か!

私「ツエルトは」

I「ツエルト?さて、どうしたっけな」

 け、どうせ消耗したんだろうよ。で、必要
に迫られグリーンのツエルトを買った後で、見つけたと見えて返して来たので、二つになったのだ。
 Iを酷い奴だと思いますか?アイゼンもピ
ッケルも駄目にして、結局あたしは買い直したのだから。決して安くは無いのだ。
 登山道具とはそう言う物なのだ。使われて
居ない時は必要な者が使う。結果として消耗して仕舞う事も有る。
 Iに貸した時は、丁度あたしがアイゼンも
ピッケルもツエルトも使用しない十年弱だったので、そんな事になったのだ。
 グリーンのツエルトにはオプションでポー
ルが付いて居た。鉄の重い奴だ。買いました。此れで完璧な簡易テントだ。でも、重くっちゃツエルトの役を果たさないんじゃ無いの?
 グリーンのデビューは晩秋の(詰まり初冬
の)甲武信岳、寒かった!ツエルトはテントでは無い。其の上ポールがやけに重くで苦労だった。カーボンのポールを売って居たので買った。これで軽く使えるぞ!
 う~ん、最後迄勘違いだなあ。
 何十年も働
いてくれるツエルトよ、有り難うね。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

緑色の 冬には氷の花でいっぱいになるツエルト 素敵です。 また、この絵が 素晴らしいです。奥様の作品ですね。雪の縦走路を後ろに、ツエルトとピッケル、、、こんな絵が描けるようになりたい!!! ごんな絵ががげるようになりだいーーー!!!
はい、Iさんは ずうずうしい人だと思います。ピッケルの柄を 岩に穴あけたり トンカチ代わりに使う為に 短くしてしまうなんて ヒドイ! これで殺されたトロツキーも、びっくり!借りたものは、ちゃんと返しなさい!だから岩屋さんは、好きじゃない。山屋さんと 人種が違うのではないでしょうか?

kenzaburou さんのコメント...

多少人種は違うかもしれませんが、其れ程悪い連中では無いのです……。

イラストを褒めて頂いて、妻が半狂乱に喜んでおります。有り難う御座います。