2010年11月7日日曜日

休題 その五十三


 本文の雪山の喫茶店で、山とは全
く無関係な、ニューギニア戦線での人肉食に触れたが、あたしは人肉食を否定しなかった。人でなし!と思った人も居るだろう。多分其のは、飢えを知らない人だろう。
 本文でもお断りした通り、あたしも飢えを知らない。唯、知識として極限の飢えを幾つか読んだに過ぎないのだが、あらゆる理性やモラルや其の仲間を吹き飛ばし去る猛威が、飢えには有るらしいなあ、と思って居る。
 飢えとは、人をして人で無くする存在らしい。俗に言う緊急避難の状態が、何時迄も続くのだと思うのはどうだろう?
 余計な説明だろうけど、緊急避難とは、緊急の場合人に害を与えても罪に問われない、と言う規則だ。たとえば海中で一つしか無い救命具を誰かと争って自分が勝ち、結果として相手が溺死しても、無罪と言う事。
 自分の心に残る傷は別にして、法律で裁くべき問題では無いとの意味だろう。至極当然で有る。黙って相手に救命具を渡して沈んで行くのも良し、あくまで戦って勝ち取るも良し、其れを裁けるのは、少なくとも人間としての存在では無い、と思う。
 で、人肉食に戻ると、無補給で一ヶ月戦った大隊では、「俺が死んだら皆で喰ってくれ」と言う言葉が交わされて居たらしい。
 常にやって来るのは銃爆撃と砲撃。息をつく間も無い。たまに生身の敵兵が現れれてくれれば、武器弾薬と水と食料の補給だ、とあたしなら思う。引き付けて撃ち殺し、火事場の馬鹿力で壕に引き吊り込んで(仲間も手を貸すだろう)、……後は言わない。
 其れを、人間として許せない行為だとのたまって処刑するなんざ、何を思い上がってんだよ!としか言い様が無い。貴方が裁いた相手は、人間として生きる事を拒否された一つの(或いは幾つもの)命で有って、人間として許せない行為と言う概念が当て嵌まらない存在だったと、あたしは思う。
 本文とダブるけど、人間を人間で無くする状況に追い込んだ軍参謀部の責任だとしか思えないので、刑場の露と消えるべきなのは、参謀殿、本来は貴方なのです。
 人肉食で許せない事例も有る。グアムで兵士が民間人(日本人)を殺害して食べた件。フイリッピンやビルマで多発した、単独の友軍を襲って喰う件。ニューギニアでも同様の例は幾つか報告されて居る。
 へー、敵なら食っても良いが、味方は駄目なのか、緊急避難じゃ無かったのか?
 こう答えよう。ニューギニアの部隊は戦い続けねばならず敵を食料とした。己の保全の為に味方を襲い殺して喰う奴とは、動機とやり方が全く異なる。味方を襲う(増して民間人を)奴らは畜生以下で有る。ハンガーデスは当然だ。
 動機が異なれば、罪も異なるだって?そう、全くその通りなのだ!!

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

まったくもって、「軍参謀部の責任です、、刑場の露となるべきは参謀部、、。」正論です。まだ 語られていない戦争中の事実がたくさんあるのでしょうね。何も語らず、墓場まで黙って持っていってしまった人たちが沢山いるのでしょう。

kenzaburou さんのコメント...

同意頂き有り難う御座います。

語らずに死んで行きます、殆どの生き残りの将兵は。

もうじき、死に絶えて、誰も居なくなるのでしょう。今生きて居る人に、是非語って欲しいと思います。