2010年11月10日水曜日

雪山の喫茶店 その四


 Nより遥かに実力の有る登山者も、当然居た訳だろうし、Nよりも男前は多分、山岳会の男性の90%近くはそうだろう。え、余りに失礼だって?確かにそうでした、80%近くでどうでしょうか?
 男女の仲とは、山の実力とは何の関係も無いって?全く其の通りです。道理です。でも、男前でも無いNがなあ。人間的魅力がものを言った、と言う事なんでしょう。
 男女の仲の機微が分からないのは私の売りで、四の五の言うだけ己のアホを晒して居るのだから、此処で引っ込みましょう。
 片手に入る人だった、と過去形にしたのは、病を得てリタイアしたからだ。さも無ければ、田部井さんの様な存在になって居ただろう。
 ん、Nの奥さんはマスコミに乗るのを嫌うかな。多分嫌うだろう(私の思い込みが入ってるんで、保証はしかねます)。だから、もしも現役で居ても、知る人ぞ知る、の人だろう。(そう言う人で有って欲しいと言う私の欲なんで、無視して下さい)
 Nが、私と冬の赤岩尾根から鹿島槍に入る言った時の奥さんの言葉が流石だ。
奥さん「爺ヶ岳南尾根をラッセルした方が、余程為になるわよ」
 此の鬼妻!!
 Nも私も、人生の厳しさの「為」を知りたいんじゃ無くて、冬の鹿島槍に登りたいんだよ!良いじゃ無いか、其の位のプチ冬山を、 亭主が古い友人と共に楽しんだってさ。
 でも、流石女房相手に熟練したNは、何だか分からん事をもにゃもにゃ言って、話を終らせた。とても良かった!とことん突っ込まれてたら、とても勝ち目は無い場面だった。
 すると、胸迄のラッセルをNとする羽目になっちまうので、爺ヶ岳には何時着けるんだろう?
 ラッセルには持って来いとNの奥さんの言う其処の尾根を、を私が春に何度か登った訳だ。サイン曲線(喩えですよ。くどい?)が有っても、ラッセルが無いだけ、確かに遥かに増しだ。あ、違いました、滅茶苦茶増しだ!
 思えば、地獄の石楠花漕ぎを初めて経験したのも南尾根だった。冷の小屋へ行く道から始まるのだが、直ぐ雪で進めなくなるので、尾根へ逃げるのだが、踏み跡を見逃して川原沿いに進んで、雪に阻まれて気付いた。外したぜ。尾根への入り口を見逃したんだ。
 右に登れば南尾根だから、無理やり雪と石楠花の斜面に取り付き、力任せに登って行ったのだが、粘りの有る石楠花の威力を嫌と言う程思い知ったのだ。しかも、滅茶苦茶急斜面を雪を蹴って石楠花を漕ぐんだから、決して楽では無かったのだ。
 それでも、足元が雪で良かった。這松だったら、登らない。引き返して登り易い所を探す。這松と石楠花の連合軍を相手にするなんざ、キチガイ沙汰だ。
 (雪山の喫茶店 その五へ続く)

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

良い写真ですねー!
やっぱり、立派な女性登山家も居たのですね。冬山のラッセルも苦じゃない というような そんな女性と、結婚された方は 本当に幸せですねー。

kenzaburou さんのコメント...

>冬山のラッセルも苦じゃない

本当に、全く苦になんかしてないのです。楽しいんじゃないのかな?

厳冬期、甲斐駒の岩場でぶら下がって夜を明かす人です。凄いですなあ。