2010年11月14日日曜日

雪山の喫茶店 その五


 で、肩に目出度くテントを張って、翌日は鹿島槍ピストンだ。前年は天候不順で追い返されたが、今年は行けそうだ、シメシメ。今年って何時?当然の質問です、二昔前の春だと思って下さい。
 朝が来た。読み通りの晴。何の読みかって
えと、夜半からやけに冷え込んでバリバリと凍りつくからだ。雲が無いので温度(?)が空に逃げて行くので、晴れる朝は冷え込む事になって居る。
 テントから顔を出すと満天の星。わー、や
った!!!
 え、何をやったの?私は何もやって無いの
は当然で、天気が良いのを喜んでんです。だって、やっと二回目に巡り会ったチャンスなんだから。
 余計な説明をしよう。嫌だって?そうでし
ょうとも!
 前の年か、其の前の年か忘れたけれども、
同じルートを行って幕営し、結局天候に恵まれずにテントで丸一日暮らして、結局スゴスゴ下ったのだ。冷たい雨に打たれ乍ら硬い雪をを踏みつつ下ったのだが、思いの外意外と(馬から落ちて落馬して)悲しいのだ……。
 良くしたもんで、そんな時には一つもテント
なんざ有りゃあしねえ、間抜けな私のだけがポツンと有って、雨に打たれ、風に吹かれて居る訳だ。
 で、此の年は他に二つテントが張って有っ
た。皆さん確りと天候を読んで居ますなあ。私も一応読んでは居たのだが、何処かに「何とかならあな」と言う気持ちが有ったのだろう。は、そんな気持ちは無い。薬にしたくとも無い。
 大慌てで食事を済ます。前述だが快晴の朝
は心がせく。くわえ煙草で準備を進める。ボヤボヤなんざあしてられない。たって勝負は、晴れて居るうちなんだから。
 二つのテントの諸君は、未だ準備中の様だ
がこっちは単独の強み、身軽が売りなのでトップに飛び出る。昔々だから、爺には簡単に立てる。今なら此れだけで一苦労、二十年とは、文字通り世の中を変える長さなんです。あっと言う間なんだけね。
 振り向けば、針の木から延々と続く主稜線、
槍が頭を出し其の後ろには真っ白な穂高。右に眼を転ずれば、薬師から立山、剣。そして進行方向には秀麗な鹿島槍。贅沢な環境此の上無しなのだ。唯、一寸と霞んで居るのが気掛かりだ。
 ゆっくりとはしてられない。天気は下り坂、
目的地は鹿島槍なのだ。冷に一気に下る。勿論今なら、ノロノロと下る事になる。
 お、小屋が開いて居る、流石五月の連休だ。
小屋は半分雪に埋まって居るので、玄関周りを掘り出して、雪の階段で下るようになって居た。尤もあたりには人影なぞ無かったが、泊り客はとっくにお出掛けなのだろう。
 横目で小屋を見乍ら歩を進める。変な雲が
湧いて来たのだ。山の天気は変わり易い、雲と競走になっちまった。
 (雪山の喫茶店 その六へ続く)

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

5月の雪の後立山連峰は そんなに大変なのですね。雪 雪 雪、、、でも後ろに 美しい針ノ木岳を見ながら、鹿島槍を目指して槍が見え、穂高が見え、右に立山連峰に剣が真近く見えるって すごい! ぜいたく!最高じゃないですか!!! 写真、よく撮られましたね。この角度じゃ、ゆっくり構図を考えて写真に凝っている余裕がなかったでしょう。

kenzaburou さんのコメント...

最高なんです!!

剣は直ぐ其処です(左ですけど)。

写真を撮って無いのは、光線がベタなので、魅力が無かったのでしょう。

私が写真に拘りが有れば、朝、爺の頂上で剣を狙ったでしょう。

センスの無い奴は仕方無いですなあ、はっはっはっは。