2010年11月20日土曜日

雪山の喫茶店 その六


 ハーハー言い乍ら鹿島槍のピークに立ったが、残念、一瞬雲の方が早く、ガスのピークで有った。従って白一色、何も見えやしない。う、う、私がもう少し速ければ、白馬迄一望だったものを(涙)。
 嘆いても仕方無いので下る。暫く下るとガ
スから出る。でも、北側はピークの向こうなので見えない。とても悲しい。
 小屋の前迄戻った。急ぐ必要も無い。此の章の題名は「雪山の喫茶店」だから、題名に副って行動しよう。ん、因果関係が破れて居るぞ、ま、書いてる奴が雑な頭なんで、良いとして下さい。
 
雪の階段を下ってアイゼンを外し、小屋に入ってテーブルを前にした椅子に座る。バイト君が顔を出すので、コーヒーを注文する。するとコーヒーが運ばれて来る。客は私のみ。煙草をくゆらし、コーヒーをすする。当たり前の風景で有る。
 処が全く当たり前じゃ無いのだ。場所は後
立山稜線上の冷小屋、季節は春。
 残念にも窓からは雪の壁しか見えないが、
一歩外に出て見れば雪山のど真ん中なのだ。其処へ立ち寄って飲むコーヒー、何て素敵なんだろう!!
 私が、誰かから其の話を聞いたとしよう。

私「良いなあ、俺もやりたいよー!」

 絶対言うに決まりきった台詞だ。

 贅沢?一寸と違う。うーん、矢張り“素敵”
としか表現出来ない。素敵って、こんな場合の為の言葉かも知れない。
 当時は素敵とは思わなかった。小屋が開い
てて時間が有た、コーヒーでも飲むか、ってな調子で唯コーヒーを飲んで、アイゼンを着けて爺を越え、テントへ帰っただけの事なのだ。
 今になって、堪らなく素敵な状況だと思う
に到ったのは、もう簡単には飲めないコーヒーだったんだ、と気付いたからだろう。
 やって出来ない事では無い。よし、やって
やろうじゃないか、と決めるのは簡単なんだけど、雪の尾根を、こぶを越え越え登るのは、決して楽では無い。当時でも辛かったんだから、今ならどうなっちゃうんだろう?
 日数を増やすしか無い。三日掛かった山な
ら四日掛ける。機会が有ったらやって見ましょう(本当けえ、逃げ腰じゃないのか?……まあね)。
 後からシミジミ思うもの、唱の文句じゃ無
いけど、若くて動けるうちは、どんな状況なのかも分からず、いや、気にせずに好き放題歩き回って居たって事ですなあ。
 いけねえ、完全に爺さんの文章になっちま
ってるぜ。反省(ペコリ)。

 何、行ける山へ行けば良いので、其処は其処の良さが有るに決まって居る。
 とは言いつつも、再度訪れるかどうかは別にして、雪山の喫茶店でコーヒーを飲む経験をしておいて、本当に良かった。だって、滅多に出来ないですよ。

2 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

雪山の喫茶店とは、冷ノ小屋のことだったんですね。3000m級の山々 後立山縦走で、爺が岳から鹿島槍山頂を終えてのコーヒーでは、美味しくないわけがないでしょう。本当に素敵なことですねー。そのころの春先の季節に 小屋が開いていて良かったですね。本当に、並みの人が体験できないことをやり、めったに観られないものを観てきた人って、贅沢な人です。うまらやし。

kenzaburou さんのコメント...

いやー、本当に良い思いをさせて貰って来ました。

でも、Doglover さんこそ、並みの人が体験できないことをやり、めったに観られないものを観てきた人じゃないですか!