2010年6月23日水曜日

又もや好事家は行く その二

FH000073

 笹やすず竹を掴んで足掻きつつ歩を(手を)進めるのだが、意外と苦労で、大変だ。わたしは振り返り、嬉しそううに言うのが常だ。
私「そーら、始まったぞ」
Y「……」
 おいおいYよ、洒落た文句の一つも返してくれよ。何時でも投げかけられる決まり文句なんだからさあ。返事が返って来た事が無いぞ。え、其れ処じゃ無いって?ご尤も!
 第一岩が当てにならない。力を掛けるとボロボロ崩れる。見た目は一応岩なんだが、実は岩のふりをした砂の集まりなんだろう。
 立ち木も枯れて居る事が多い。頼りは笹かすず竹で、数本を纏めれば立派な手掛かりになる。一本では駄目だ。何本も纏めて掴む(其れも確りと)のだ。
長い時は小一時間も、そんなとこで悪戦奮闘する訳なので、如何にも詰まらない斜面で死に物狂いとは、変な奴と言われても返す言葉は無い。無言で頷き、貴方を連れて登りたい。多分、私はひっぱだかれるでしょうな。
 変に筋肉に負担が掛かり続くので、つりそうになったりする。
Y「あ!」
私「どうした」
Y「腿がピクっとした」
私「休むか」
 と言っても急斜面に張り付いて居るのだから、ザックを下ろしてゆっくりと休憩を取る環境とは思えない。一息入れて、尾根迄は頑張るしか無いのだ。或いは、力尽きて滑り落ちるかだ。
 滑り落ちるのは良い。登り返すのは楽では無いが、登り返せば良い。下手に滑り落ちると真直ぐ落ちそうなので、そうなったらもう蹲ってるしか無い。ひょっとすると骨折してる?
 焼き物の蹲る(うずくまる)は良い。伊賀の売りは忍者だけでは無いのですなあ。でも、山中の蹲るは嬉しく無い。全力を振り絞って尾根迄は行くのだ、其れ以外には始めた限りは、生きる道は無い!(勿論オーバーです)
 尾根に立ってしまえばこっちのもんで、藪が煩いだけだ。丹沢では勿論石楠花漕ぎじゃ無いし、密生した篠竹で無ければガサガサ行けるのだ。密生した篠竹だったらどうするって?泣け!
 何度そんな斜面を登った事だろう。数えるのも面倒だ。そそり立つ岸壁に挑むのでは無い。凍りの大滝を登るのでも無い。土と崩れる岩の急斜面を登るのだ。バーカ、と私なら言うだろう。
 頗る付きの物好きで有る。かつ、辛く危ない。蓼食う虫も好き好き(変換出来た!)って事ですなあ。
 従って余分な危険と苦労を避ける為、取り付きは極力植林帯を利用する。
 (又や好事家は行く その三へ続く)

6 件のコメント:

DOGLOVER AKIKO さんのコメント...

山頂からの雲海を見下ろす写真、、、すばらしいです。何ともいえない朝焼けの色が 美しいですね。ニコンで撮られた芸術写真の数々、本当に貴重です。
「藪を嗅ぐ」って、すごいですね。誰も行かないルートを制覇する喜びは、何にも替えがたいことでしょう。いいですねー。だけど「急斜面の登り」「藪こぎ」「雪のラッセル」絶対ご一緒しません。
「焼き物の蹲る」ということばには、どんな特別な意味が含まれているのですか?

悪戯っ子(デラシネ) さんのコメント...
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悪戯っ子(デラシネ) さんのコメント...

ドッグラバーさんの言うとおり良い写真ですね。地平線が斜めに見えるのは多分遠くの尾根が左にゆくほど低くなり、雲もゆっくりと流れているのでしょう。
朝の写真ですよね。もしかして未だ目がよく醒めていなかったので傾いたか??? 失敬しました。
小生も仕事でダムサイトに行ったときヤブ漕ぎしました。殿の人がカマでバサバサ切ってくれるので楽でしたけ。鉄砲打ちさんが二番手。意外にも最初にへばったのが一番若い地元の男でした。
因みに、みんな重装備なのに小生は長靴でした。

kenzaburou さんのコメント...

Doglover Akiko さん

蹲るとは、信楽、伊賀の焼き物の小壷を言います。如何にも蹲って居る様に見えるので、命名された様です。
茶席で珍重されます。

あたしゃあ酒器に特定してるんで、縁が有りません。

kenzaburou さんのコメント...

悪戯っ子さん

左が海方向なので、雲も下がります。

小屋の主人は大抵長靴です。悪戯っ子さんも、其のクラスって事でしょう。

悪戯っ子(デラシネ) さんのコメント...

そうですDogLoverさん。ご明察です。
スキーは好きで八方の第三ケルンまでスキー靴で登り(山屋さんに好奇の目でにらまれてました)、15分でゴンドラの終点まで滑り降りてボルヒチを食べる。それからリフトで登り国民宿舎まで春なら15分の登りです。これで一日の予定終了・・・

因みに栂池の成城学園の小屋にも泊まったことがあります。オートバイのようなハンドルとサドルの付いた滑る道具があり大いに楽しみました。その時、辛かったのは遠くに黒い雲が見えたと思ったら、5ミリ大の雹に見回れたのです。小さな灌木の下で蹲り絶えた経験があります。帽子とフードがなかったら体験な目に遭ったと思います。

そろそろ歳なのでノルディックでも始めようかなと思いますが、山の知識がないので危険ですよね。若い頃、蔵王の樹林帯で迷い、やっと見晴らしの良いところに出ると、雪の上に笹が顔を出していて、これがまた厄介でした。やはり、ちゃんとしたピステが安全ですが、何うしてもチャレンジしたがる悪戯っ子は我ながら長生きしたもんだと、神に感謝、感謝です。