2023年3月23日木曜日

山の報告です その二百三


  積雪期は雪を溶かして水を造る。その雪を採るのはあたしの仕事だ。テント周りは新雪で何の苦労もなかった。汚れた雪の時は表面を削って、中々苦労するんです。新雪は悠々30Cm以上は積もっていた。結構降ったのだ。

 二日目五時前に小用の為にテントを出ると明るいライトで三人が来る。朝三時に登り始めたと言う。外国人交じりのパーティだった。我々が出発する間に数パーティが通って行って、七時に出発する時は立派なトレースが出来上がっていた。快晴である。やったー、なのだ、この時迄は。

 あたしは三月の雪山の経験がない(除丹沢)。他の月はあるんだけど。で、春山のつもりでその装備だった。歩き始めて登りに掛かるとモロ強風。冷たい北風でトレースも見る見るかき消されて行く。ピッケルを突こうとすると風がさって真っすぐ突けない。

 防風ジャケットは作業用着である。フードを被りたかったが手がかじかみ思うに任せない。冬用ジャケットなら大きいフードを簡単に被れるし、開口部の調節も容易である。それに保温力が全然違う、作業用防風着ではどんどん体温を奪われる。ズボンは冬用ニッカだが、防風ズボンは未着用だった。従って冷たい風が突き刺さるの。

 我々を抜いて行く若者達は完全冬装備である。あたしゃあ三月の山を舐めていた。天気だからOKさ、と強風を考えなかった。冬山に戻っていたのだ。多分低体温症寸前に追い込まれたのだ。バランスも危なくなって来た。Yに寒いかと聞くと寒くないと言うので、彼の持つ予備セーターを借りて着込んだ。

 左耳に棒を突っ込まれた様な違和感がある。Yに聞くと、雪が詰まってると雪を取ってくれた。セーターを一枚増やしフードを被って多少楽にはなったですよ。これって完全な装備不足、ダメじゃんの見本です。大分前に抜いて行った若者が「低体温症になるので下ります」と下って行く。もう完全に冬山ですよ。(続)

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