2022年6月7日火曜日

休題 その四百二十五

 


 一年程前にも「坂の上の雲」での乃木将軍の扱いに異議を唱えた。その時に触れたが、児島襄氏に八巻ものの「日露戦争」がある。文庫本でも厚めで、尻ポケットに入れるのは一寸と躊躇う位だから、大作だ。

 従って政府の動き、軍令部の動き、満州総軍の動き、各軍の動き、各師団の動き、ロシア側の動き、ルーズベルト大統領の動き等々実に精密に調べ描いている。

 各会戦も詳しく追っているが、読んでいると児玉源太郎参謀長も松川作戦高級参謀も無能に見えて来る。あたしは過去を読んでいるから”神の視点”なので、自分だったら彼等の千分の一の働きもできないのは承知です。

 思い込みの楽観的判断で、現状とかけ離れた命令を出す、或いは必要な命令を出さないと言う局面が多過ぎる。クロパトキン司令官の誤判断に救われた、とは既述だ。だが、そのお陰で会戦の度に日本軍は莫大な損害を被る事になり、勝ったと言う割には損害がロシア軍を上回るとの結果を招来した。

 どうしてだ? 情報収集がお粗末なのではないだろうか。余りに酷い言い方とは思うがインパール作戦の司令部の様に、前線に出ずに後方から命令を出していたからじゃあるまいか。前線に司令部を進めなくとも良い。参謀将校をマメに派遣して現状を掴めば良いのだ。あたしにはそれを怠ったと見える。

 ロシア軍は守りに強い。って事は陣地を構えるにしても簡単な要塞並みに固めている訳だ。無闇に攻撃をさせてはいけない相手だ。それなのに無闇と攻撃させる。そして死傷者が続出する。

 どの会戦もロシア軍は自主的に撤退している。敵に出血を強い乍ら後退する、ロシア伝統の戦い方だ。ナポレオンもそれで敗れたではないか。その故事は勿論学んでいただろうに、まんまと手に乗った。

 乃木将軍は偉大だったと再認識しました。

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