2022年6月10日金曜日

柄でも無い事 その八十三

 

 あたしはスポーツ音痴な事この上なしってな存在(特に球技)なので、ボクシングだってやった事は勿論見る事すらない。だが、井上尚弥だけは別だ。

 ネットで良く見かけて覚えたのだが、バンタム級王座決定トーナメント戦でトップに立った時は喜んだもんだ。通称が”モンスター”で、並外れた才能らしい。

 そのトーナメントで、たった一人判定勝ちしたのがフィリッピンのドネアだ。と言う事は他の対戦相手は皆KO(或いはTKO)した訳だ。ドネアには右瞼上をパンチで切られ、骨折迄して鼻血も出させられ、十二回に縺れ込んだが判定で圧勝した。

 ドネアは五階級制覇、一時は四団体統一王者と言うフィリッピンの英雄的ボクサーである。フィリッピンに限らずボクシング好きには極めて有名な選手の様だ。物凄く強いだけでなく紳士的(試合に於いても!)である。

 そのドネアが自己のバンタム級三団体王者を賭けて井上尚弥と戦ったのが今月七日、埼玉スーパーアリーナに於いてであった。TV映はない。アマゾンプライムが世界放映権を独占した。日本では楽天が権利を買ってネット配信した。TVはネットに買い負けたのだ。

 結果は二回に井上尚弥のTKO勝。勝負は一回の終了寸前の右ストレートで着いていた。プロの説明を聞いて初めて分かったのだが、井上尚弥が左フックを出すと見せ、カウンターを打とうとするドネアにカウンターを打ち込んだ、詰まりダブルカウンターだったそうだ。

 プロ達は「あれはできない」と溜息交じりに語る。理屈は分ってもそうは出来ないものらしい。そして「井上尚弥の試合は参考にならない、レベルが高過ぎる」と。

 其処等の事はあたしには分らん。分かるのは二人の試合が綺麗な事、敗れて去るドネアにドネアコールが起き、ドネアが観客に手を振り乍ら去る姿の美しくも寂しい景色のみなのです。

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