2021年9月27日月曜日

閑話番外 その百二十二

 

 昔の山岳会は人間関係が濃厚だった。いや、人間関係が全てと言っても過言ではなかろう。先鋭的な会から、あたしがいた様なノンビリした会に至る迄、同じだろう。

 新人が入って来れば、それなりに教え訓練し、力量を確認しておくものだった。その方が会にも新人にも安心でしょうが。

 山岳会だから山に登るのは勿論楽しみだが、月一の例会で皆に会うのも楽しみだった。新宿の喫茶店で三時間はやってた。コーヒー一杯で粘るのだから、店も堪ったもんじゃないw

 当然会員同士の恋愛もある。それで結婚したのがS夫婦だ。高校の同期生ではあるのだが、在校中は殆ど知らぬ仲だった。五十五人のクラスが九個もあるんだからね。山岳会が縁結びって訳ですな。

 ハイキングクラブという凄くでかい組織も有った。本屋で会報を売っていて翌月の山行計画が発表されている。気に入った計画に申し込んで、集合場所で顔を合わせる。

 今やその形式が主流になった様だ。ネット上の山岳会である。発表も申し込みも皆ネット。初対面でお互いの力量も不明で気心も知れない、あたしが様な古い人間は「大丈夫けえ」と思うのだが、大丈夫らしい。

 幕営は一人がテント一つ。個室ですなあ。単独行と荷物は変わらないが、装備が格段に良くなっているので可能なのだろう。テントだってとても軽くなったし。多少の重量増加なんか、プライバシー尊重の前にはどうって事ない訳だ。

 それで楽しいのかなあ?酒位一緒に飲むんだろうなあ、と考えるのは昭和の爺さんってこってしょう。濃厚な人間関係なんてウザいと感じる時代なのだろう。共に歩き共に景色を愛でる、それで充分なのだろう。

 あたしの様な化石人間は、大きいテントに皆で入り、一緒に飲んで食ってだべって寝て歩く。そうでなくちゃピンと来ないんだけど。

0 件のコメント: