2020年12月4日金曜日

閑話 その三百四十一

 

 

 さて、鐘撞き山の下り。Yはさぞや必死な事だろう。前穂の思いがあるので、よーっく分かる。一つ間違えると膝が折れて(骨が折れるのではない)、足はグネリとなって体は前に落ちて行く。脳がストップをかけても筋肉は一切反応しないのだ。おお、恐ろしい。

 Yは一歩一歩全神経を集中してた訳だ。で、その緊張が切れた。突然「もう駄目だ、ストレスが凄い、ブレーク、ブレーク!」と叫んだ。言葉通りに限界を迎えたのだ。「思う様に進めないもどかしさと転ぶまいと言う緊張で、も の凄いストレスだったんだ」。聞くだに気の毒千万である。

 そこ迄気の毒な状態になる為には一年半山に登らないだけでOKとは、恐ろしい現実でありますなあ。或る程度の歳になると、然るべき努力を怠ると見る見る衰えて行くのが、世の習いってこってす。あたしが前穂で思いもよらない醜態を晒したのも、それ以前の山行回数が減っていた事と決して無関係ではないと思っている。

 そのうちにダラダラに入る。そうなりゃ段差が激減してYもどうにか歩を進められる。そして車に辿り着いたのだ。

 後は町田に向けて走るのみ。町田と裏丹沢が近いのはとても嬉しい。世田谷に居た頃は中央高速で相模湖へ出て、藤野から山道を延々と走ってやっと東野に着いたものだ。其の時間と比べれば半分以下だ。

 大室山からの帰りは普通は十時そこそこなのだが、この日はそんな訳で十二時を過ぎていた。何時もならガストだが一杯である。庄屋に入って一杯やった。町田には昼から飲める店が十件以上あるのだ、えっへん!

 Yは「さっき迄必死だったのに、今はこうして飲んでいる、夢んごたあるですよ」と言う。あたしも同感だ。余計な事だろうが、こんな様子じゃ山なんざ登れなくなるぞ、衰え果てるからな、と苦言を呈したのでした。

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