2020年6月3日水曜日

休題 その三百十一



 武漢肺炎はほぼ終焉を迎えつつある様だ。とは言え、未だ未だ予断は許されないけどね。日本の場合は世界の水準で見ると桁違いの少なさだ。これは各国が気付き始めたらしい。
 何故日本は被害が少ない? 握手やハグの習慣がないからとか、靴を脱いで部屋に入る習慣とか、極めて清潔な生活習慣とか、マスク着用の習慣とか、強制性のない自粛をも守る民族性とか。きっとどれもが相まっての結果なのだろう。
 清潔さで言うと、幕末に日本を訪れた人々は、江戸の清潔さに驚く文章を多く残している。清潔は江戸時代からの文化なのだ。
 清潔を保つには水が不可欠である。江戸市中は埋め立て地が多く、井戸は掘れなかった場所が多かった筈だ。そこで六水道と呼ばれた水道を引いた。実際にずーっと使われたのは二本で、神田上水と玉川上水である。
 神田上水は今の井ノ頭公園から引いた。神田川がそれである。もう一本は羽村から引いた玉川上水で、これは相当に高等な技術を要したのだ。前長60Kmに対し、高度差は僅か4mだったのだ。1Kmで6.7Cmしか下らない、一寸と下手すりゃあ流れなくて溢れるじゃないか。
 夜間に線香の明かりで高低を調べた、と教科書に載ってた覚えがあるが、半端ない観測技術と土木技術の結晶なのだ。お蔭で各町々には清冽な水が流れ込んだ訳だ。時代劇でよく井戸が出て来るが、あれは上水を最終的に引き込む為の器だったのだ。
 下水道はなかった。その代わり、便所に溜まった糞尿を買い取る業者がやって来た。何の為かって?肥やしにするのだ。代金は大家の収入になった。鎖国時代は一切の無駄を省いて資源を循環活用してたってこってす。
 二本の上水があったから百万都市江戸は清潔に暮せた訳で、その習慣が令和の御世になって国を救っているのです。

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