2019年9月3日火曜日

閑話 その三百



 空が切れて、もう稜線だろうと思っても登りは続く。小休止して損害を調べる。虫に喰われた痕と蛭にやられた所をチェックしたのだ。そう、源次郎に蛭が出たんですよ!
バカな経路で巻いて、夢中で足掻いていた時に喰われた。その後もたまにチェックをすると、何匹もくっついていたりする。とうとう源次郎も蛭に汚染されちまった。 
 歩き出して間も無くバカ尾根、大通りである。花立山頂と花立小屋の中間部に出た。Yを振り返ると大分後ろにいる。懐かしい言葉を叫んだ。「夢泣くな!」。いやあ、何年振りに使っただろう。昔はしょっちゅう使っていた様な覚えがある。結構ヤバい山登りばっかりやってたんですなあ。
 下りに掛かればYも大丈夫、尾根筋は風も通るしぃ、ってのは甘い考えだった。大階段を下る頃は元気だった。天神尾根を下り出した時はフラフラで、段差が大きいと偉く苦労をしている。一気に下れると思ったが、ヤットコサで、テント場到着は十六時半にはなるだろう。遅くても無事に着ければ良いのだ。
 九十九折れ(つづらおれ)が続く。あたしが角を曲がって進むと、その前の角を曲がってYがこっちに向かって来る形になる。Yが足を滑らせて、宙を掴んでその侭落下し、下の道で止まるかと思ったが更に落ちたが、鹿止めネットがあって直ぐに止まった。
 落ちる一部始終を目撃したのは初めてだ。ガランガランと、切り株や岩のある所を落ちる。2m2,30cmの落下だったが、そういう固い物にはぶつからなかった。木の枝で頭を打った位だ、と言う。何とラッキーなYなんだ! 一つ間違えれば大怪我だ。あ、滑
ったと思った時に木を掴もうとしたが掴めなかった、とYの談。
 川音はしているが中々着かない。そういうもんなんです。開けない夜は無い、やがて源次郎の堰堤に、スタート地点に立った。(続)

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