2018年8月4日土曜日

閑話番外 その百四



 閑話で新しい地下足袋で塔へ登った話をした。前に地下足袋は鳶職用の底が薄い物だったので、消耗しつくして底には穴が開いたのだ。充分役は果たしてくれました。
 鳶職用のは石を踏んで泣く思いがつきものだった。高取山でも最低一回はあった。塔ともなると四、五回はイッテーー!となった。そうなると思う様に下れなくなる。慎重に足を置く場所を見極めるのだ。でもですよ、ず――っと気を張ってはいられない。で、突然イッテーー!となるのだ(涙)。
 痛くて泣くのは嫌なので、底の厚い地下足袋を探した。丸五の祭り足袋がそれだと分かった。万歳!
 ワークショップには置いてない。いってえ何処なら売ってるんでえ?
 結局ネットで探して購入したのだ。普通はカード決済らしいが、あたしはカードは信用しない原始人なので、コンビニ後払いにした。余分な経費が掛かるが、仕方ない。そして三十日に物が届いて翌一日に塔へ出掛けた訳だ。
 祭り足袋は底のゴムが昔の運動靴並みに厚い。しかも確りとギザギザが入っている。依って滑りにくい。爪先と踵に少々だがゴムが掛かっている。従って岩角にぶつけても痛くないのだ。
 底のゴムは足底の形に合わせて波打っている。足場の上で足底の感覚を大切にする鳶職と、重い神輿を担いで歩く祭り用との用途の違いだろう。
 閑話に書いた通り、一度も痛い思いはしないで済んだ。その上たしかに滑りにくいし、とても嬉しい。これなら夏のアルプスでも充分行ける水準だ。
 とか言い乍ら、あたしゃあ地下足袋でアルプスへは行かない。地下足袋ででかいキスリングを背負って風の様に通り過ぎて行く、伝説の単独行者、加藤文太を侮辱する様な気がするじゃないですか。

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