2018年8月22日水曜日

閑話 その二百六十七



 梅酢を三倍に水で割ったのを500ml持って行ったのだが、それが多分功を奏したのだろう、Yは何とか太腿を騙し騙し次の斜面を登れた。其処を越えられればマイシクレット幕営地は直ぐ其処なのだ。
 着いたのは十四時、Yはへろへろだがどうにかテントを張り終えたと同時にポツリと来た。急いで荷物を放り込み、二人がテントに入るとダーッと降り出した。
 危ねえ危ねえ、沢に入っていれば未だ詰め上げのザラガラに手古摺っている筈だ。正しい判断だった訳ですなあ。
 雨はは雷を伴った土砂降りとなった。テントの中の我々には何でも無い。一気に涼しくなった風が強く、テントを揺さぶる。ラッキーだったなあ、我々も結構行いが良いのかな?
 Yは山で雷に会うのは初めてだと言うので、え!と驚いた。思い返せばそうだ。アルプスを縦走してれば、午後には必ずと言って良い程雷は付物なんだけどね。激しい雨音と風を聞き乍ら一杯やってるのは、良いものである。
 二時間程で雨は上がった。半端な雨なら後からムーンと蒸すが、大量に降ったので熱を完全に奪い去り、表に出ると寒い! 尤もあたしゃあ網シャツとパンツだけの姿だからか。
 ズボンとシャツは濃い塩水に漬け込んだ状態なので、とてもじゃないが着てはいられない。あたしでさえそうなんだからYはもっと凄いのだろう。現にYが「あ」と首筋を拭うとポロリと蛭が落ちた。丸くなっていて半死半生である。ははー、Yの汗の塩分にやられて血を吸う事も出来なくなっていたんだな。恐るべし、Yの汗!
 寒い位の夜を過ごし、夜中の宴会も楽しんで、翌朝はとっとと下山した。早朝から登山者が来る。一番バスではない、車かタクシーで入山の諸君だろう。
 鶴巻温泉で途中下車し里湯に入り、Yは全て着替え、サッパリして帰ったのでした。

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