2017年10月3日火曜日

柄でも無い事 その六十四




 高校のコーラス部の同期生にNhがいる。彼は成蹊大学OBグリークラブに所属しており、二年ごとに発表会が有る。先日其の発表会へ行って来た。コーラス部OBが十人やって来た。あたしも其の一人だ。
 二年かけて練習するだけあって最後は難曲なのだ。二年前は「富士山」だった。今年は多田武彦作曲「尾崎喜八の詩から」。微妙な和音のアカペラなのでさぞや大変だっただろう。
 場所は三鷹市民ホール会場なので千二百人以上入る。八分の入りだったのでざっと千人。入場に三十分要したのには驚いた。併し、良くぞ集まったものである。
 Nhは我々に合流すると言う。発表会の後はメンバーで夜中迄飲んで飲んで大打ち上げってえのが決まりである。其の解放感と充実感は物凄いもので、夜が更けるのにさえ気付かないものなのだ。
 Nhは今年の五月に愛妻を亡くしている。
Nh「何だか打ち上げに出る気がしなくて」
 そういうものなのだろう。掃除は俺の仕事なんだ、上手いもんだよ、と言っていたが、奥さんが亡くなってからは掃除もしなくなったと言う。張り合いを無くしたと言う事なのだろう。
 集まったのは男性が四人女性が七人だが、女性に一人酒飲みがいるので飲むのは五人だ。結局、ワイワイと騒ぎ飲む展開にはなってしまう。
Nh「やっと夏物を出したのに、もう冬物を探さなくちゃ」
 仲が良い夫婦だったのだ。一期下のSbなんざ一階二階で別居、話はメールで済ませてるそうだ。多少尾鰭は付いているだろうが。
 OBグリークラブはアンコールで「遥かな友へ」を歌った。
Nh「不覚にも落涙したよ」
 御承知だろうが詩は「静かな夜更けに 何時も何時も 思い出すのは お前の事……」

 あたしでも落涙する。

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